「ジンジャーとピクルズや」のおはなし

『「ジンジャーとピクルズや」のおはなし』（The Tale of Ginger and Pickles）は、1909年に発表された、英国の著名な絵本作家ビアトリクス・ポターによる作品です。広く愛される「ピーターラビット」シリーズの一冊として数えられています。

物語は、雄猫のジンジャーと猟犬のピクルズという二匹の動物が共同で経営する、町の雑貨店「ジンジャーとピクルズや」を中心に展開します。彼らの店は、ピーターラビットの世界に登場する様々な動物たちが日用品などを買いに訪れる、地域に根差した存在でした。店内には、急に必要になるような特定の商品を除けば、ありとあらゆる品物が豊富に揃っており、客にとっては非常に便利な店として認識されていました。

しかし、この「ジンジャーとピクルズや」の経営には、大きな特徴と同時に深刻な問題がありました。それは、来店する顧客のほとんどに対して、商品をツケで販売していたことです。現金取引をしないというタビタおくさんの店と比較して、形式的な売上は多いように見えましたが、実際には商品が売れても手元に現金が全く入ってこないという事態に陥っていました。

現金が全くない状態が続いた結果、ジンジャーとピクルズは自分たちの店の在庫である食料品などを食べて生活を維持せざるを得なくなります。さらに事態は悪化し、猟犬であるピクルズの犬の鑑札の更新費用さえ捻出できず、鑑札が期限切れになってしまうほど経営は逼迫していました。

ある日、二人が店の奥で、滞納している顧客への請求書を作成し送付しようかと話し合っていた時のことです。店内で不審な物音がしたため見に行くと、そこには一体の警官の人形が立っており、手帳に何かを書き付けている様子でした。ピクルズはこれに驚いて吠えかかりますが、警官人形はそのままどこかへ消えてしまいます。後に残された机の上には一通の封筒があり、中身を確認するとそれは税金の納付通知書でした。現金が全くないジンジャーとピクルズには、この税金を支払う手段がありません。万策尽きた二匹は、やむなく店を閉め、別の場所へ引っ越すことを決断します。

地域で唯一ともいえる品揃えを誇っていた人気店が突然閉店したことにより、そこに住む他の動物たちは買い物の際に大変な不便を感じるようになります。しばらくして、ヤマネのジョンが閉鎖された店舗で新たな雑貨店を開業しますが、彼の店の評判はあまり良くありませんでした。結局、ジンジャーとピクルズが使っていた場所には、今度は雌鶏のヘニー・ペニーが入り、「めんどりや」という名前で再び店を開くことになります。

ヘニー・ペニーの店は、開店当初、釣銭を計算するのに少し時間がかかることもありましたが、彼女は徹底して現金払いを貫くという方針をとりました。この堅実な商売の方法が顧客からの信頼を得て、徐々に人気を集めるようになります。現金取引を基本とした「めんどりや」は、やがて地域に根差した繁盛店として成功を収めるのでした。この物語は、表面的な売上だけでなく、現金管理の重要性を示唆する経済的な側面も持つ作品と言えます。

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