あいち国際女性映画祭

あいち国際女性映画祭は、愛知県で毎年秋、基本的に9月上旬に開催される国際映画祭です。1996年に始まり、特に中京圏においては唯一の国際映画祭として重要な位置を占めています。

この映画祭の主な目的は、世界各地で活躍する女性映画監督を紹介し、彼女たちの視点を通して描かれる多様な女性の生き方や社会問題をテーマにした優れた作品を上映することです。また、映画上映に留まらず、映画監督や専門家を招いたシンポジウムやワークショップなどを開催し、参加者とゲストが直接交流することで、女性の立場からの国際文化交流や、映像文化を通じたジェンダーに関する理解促進を図っています。

主会場は名古屋市東区にある「ウィルあいち」ですが、開催年によっては小牧市、日進市、田原市、豊田市、長久手市、安城市、犬山市、知立市など、愛知県内の複数の市町でもサテライト会場を設けて作品が上映され、地域に開かれた映画祭としての側面も持っています。

映画祭の歴史をたどると、第1回は1996年6月に5日間開催され、日本初公開を含む24作品が上映され、1万人を超える観客が訪れました。この初回では、「女の視点、男の視点」をテーマにしたシンポジウムや、岩波ホールの高野悦子氏、黒澤プロダクションの野上照代氏といった著名人による講演が行われました。

1997年からは開催時期が9月上旬に変更され、以降この時期に定着します。初期の映画祭では、高野悦子氏の講演が引き続き行われたほか、監督や脚本家、衣装デザイナーのワダ・エミ氏、俳優のウッタラ・バオカル氏など、国内外の著名なゲストを招いた対談やゲストトークが数多く企画されました。これらのイベントは、参加者が映画の作り手や専門家の話を聞き、交流する貴重な機会を提供しました。

2000年代に入ると、豊田市や安城市、犬山市など、主会場以外での開催が広がりを見せ始めます。これは、より多くの県民に映画祭に触れてもらうための試みでした。2003年、2004年には、2005年に開催された愛・地球博を意識し、環境問題をテーマにした企画も盛り込まれるなど、その時々の社会状況を反映したプログラムが組まれることもありました。

第10回を迎えた2005年には、記念イベントとして過去の上映作品の再上映や記念講演が行われるなど、節目の年も大切にされています。

近年では、未来を担う女性映像作家を発掘・育成するため、フィルム・コンペティションも開催されています。2019年には実写部門で佐藤陽子監督の『わたしのヒーロー』、アニメーション部門で袴田くるみ監督の『タイムマシン』がグランプリを受賞し、はるな愛氏の初監督作品も特別招待作品として上映されました。2020年は、新型コロナウイルス感染拡大防止策を取りながら開催され、実写部門では大森歩監督、アニメーション部門ではきしあやこ監督の作品がグランプリに輝いています。

映画祭の上映は各回定員制で、多くの年で1万人を超える参加者があり、高い関心を集めています。入場料は有料の上映回と、ゲストトークやシンポジウムなど無料の企画があり、参加しやすい料金設定がなされています。

あいち国際女性映画祭は、単に映画を観る場としてだけでなく、女性の視点、社会の課題、国際交流といった多角的な視点を提供する文化イベントとして、愛知県において重要な役割を果たしています。

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