あいりん労働福祉センター

あいりん労働福祉センター：日雇労働者の歴史と未来を繋ぐ場所

大阪市西成区萩之茶屋にあるあいりん労働福祉センターは、日雇労働者の就労支援と福祉向上を目的とした、歴史と社会問題を深く反映する施設です。かつては、多くの労働者にとって仕事探しと休息の場として機能する「寄り場」として知られていました。

寄り場としての機能と歴史

1970年の竣工以来、あいりん労働福祉センターは、早朝からの求人活動の場として重要な役割を果たしてきました。関西圏のみならず、全国各地からの日雇労働者が集まり、建設業や解体業などの仕事を求めていました。1階は、早朝5時にシャッターが開き、企業関係者による求人活動が行われる独特の空間でした。ピロティ構造の建物は、仕事を得られなかった労働者にとっても、休憩や休息の場として利用され、日々の生活を支える重要な拠点となっていました。

施設内には、あいりん労働公共職業安定所をはじめ、売店、食堂、喫茶店などのテナントも入居しており、労働者の生活を多角的にサポートしていました。シャワールームやロッカールームといった設備も整えられ、労働者の日常生活を支えるインフラとして機能していました。

老朽化と建て替え問題

築40年を超え老朽化が進んだ施設は、耐震性にも問題があることが判明し、建て替えが決定されました。2019年3月には病院以外の部分が閉鎖されましたが、労働者側の抵抗により、強制排除が行われる事態に発展しました。ハローワークは南海電鉄の高架下に移転し、閉鎖に対する抗議活動が展開されました。

建て替え計画では、旧施設の解体後、2025年頃を目処に新しい建物の完成を目指していました。市営住宅と病院は萩之茶屋小学校跡地に移転し、新施設には西成労働福祉センターとあいりん労働公共職業安定所が入居する予定でした。病院は2020年12月に移転を完了しましたが、建物の閉鎖後も、路上生活者による建物の占拠が続き、解体作業は遅延しました。

大阪府は占拠者への立ち退きを求める裁判を起こし、2021年12月の大阪地裁、2022年12月の大阪高裁で勝訴しましたが、強制執行が認められませんでした。2024年5月29日、路上生活者側の上告が最高裁で却下され、大阪府の勝訴が確定、同年12月1日、強制執行により野宿者の排除が行われました。

あいりん地区と労働者の未来

あいりん労働福祉センターは、単なる福祉施設ではなく、あいりん地区の日雇労働者の歴史と生活、そして社会問題を象徴する場所です。建て替え問題は、労働者の生活と権利、そして都市開発の複雑な関係性を浮き彫りにしました。新たな施設の建設は、日雇労働者の支援体制の再構築と、より良い生活環境の整備という大きな課題を背負っています。今後の進展と、あいりん地区の未来に注目が集まります。

アクセス

所在地：大阪府大阪市西成区萩之茶屋1丁目3番44号

アクセス：JR・南海　新今宮駅西口より徒歩1分

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