あかり (人工衛星)

あかり（第21号科学衛星ASTRO-F）

「あかり」は、日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）が開発した赤外線天文衛星であり、IRIS（InfraRed Imaging Surveyor）とも呼ばれています。2006年2月22日にM-Vロケット8号機により内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。この衛星は主に赤外線による天文観測を目的として設計され、特に掃天観測によって広範囲の天空地図を作成することが期待されました。

目的と観測成果

「あかり」には、以下のような観測目標が設定されました：

• - 銀河の起源と進化を探る
• - 恒星の誕生と最期の詳細を調査する
• - 褐色矮星の探索
• - 太陽系外惑星系の発見
• - 彗星の発見

ここでも特に注目すべきは、太陽系内の小惑星の観測でも重要な成果を上げた点です。

概要と運用

「あかり」は赤外線の天空地図を制作するために、掃天観測技術を使用します。この技術は、望遠鏡の向きを変えながら空を観測し、そのデータを統合して広範囲の画像を得る方法です。このため、「あかり」はスキャナのような役割を果たしています。

同時期に稼働していた赤外線天文衛星スピッツァー宇宙望遠鏡は、特定の領域を詳細に観測することを目的としており、「あかり」とは異なる性質を持っています。また、1983年に打ち上げられたIRASも同様の目的で開発されましたが、「あかり」はその機能をさらに発展させています。

「あかり」は太陽同期軌道に投入され、地球の昼夜境界線を周回します。この軌道では、常に太陽が真横に位置し、観測条件を安定させることが可能です。もともとの運用目標寿命は3年でしたが、実際には5年以上運用されることができました。しかし、2011年5月からバッテリーの劣化により、観測が続けられなくなりました。同年11月24日に停波作業が行われ、その運用は終了しました。

観測機器とデータの分析

「あかり」に搭載された主な観測機器には以下のものがあります：

• - 遠赤外線サーベイヤー（FIS）: 掃天観測を行うための主要な機器であり、分光分析も可能です。特定の波長帯に対応した2台の検出器が搭載されています。
• - 近・中間赤外線カメラ（IRC）: 主に指向観測のために設置されましたが、掃天観測にも利用されます。

打ち上げ直後には幾つかのトラブルが発生しました。特に、太陽センサが正常に動作せず、姿勢制御が困難になる状況がありましたが、最終的には代替ソリューションで問題を解決しました。

研究成果と後継機

「あかり」が観測したデータは、その後の分析でも注目され続けています。2018年には、小惑星帯のC型小惑星における含水鉱物の存在を示す結果が報告されています。さらに、あかりの後継機としてはSPICAが提案されており、赤外線天文学における研究のさらなる発展が期待されています。

このように、「あかり」は日本の天文学の発展に大きく貢献した衛星であり、宇宙における様々な現象を解明するための貴重なデータを提供してきました。

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