あしたの風

あしたの風

「明日の風」は壺井栄による日本の短編小説であり、彼女の作品の中でも特に注目された一篇です。この作品は短編小説集の表題作としても知られ、戦後の時代背景を描写した児童文学の要素を持っています。

概要

本作が初めて発表されたのは、戦後間もない時期に『小学五年生』（小学館刊）に掲載されたことです。物語は、母子家庭で育った少女夏子の日常を通して、「現在」に地に足をつけて生きる姿を描写しています。夏子は、周囲の状況に流されがちな人生の中で、母親が彼女の幸せを願い、支える姿が印象的です。1958年には、新潮社から短編集として公式に刊行されました。

また、NHKの連続テレビ小説としても2度ドラマ化されており、特に1962年から放送された朝ドラは、壺井の作品を基にしながら新しいストーリー展開を見せました。短編の内容を再構成し、家族制度をテーマにしたストーリーに仕上げられたことで、原作とは異なる側面が強調されています。

あらすじ

物語の中心にいる夏子は、戦災で父を失った母子家庭で育っています。ある日、夏子は雨の日になると機嫌が悪くなりがちです。その理由は、以前履いていた長靴を弟にあげてしまったからです。新しい長靴を買う余裕がない家計のため、母子はそのことで苦しみますが、夏子は母を困らせてしまうことを理解しています。

ある朝、夏子のために新しい長靴が用意されていたことに気付き、彼女は大喜びします。長靴を履いて学校に行く日が待ち遠しい夏子。ところが、学校の時間中にその長靴が消えてしまいます。クラスメートが妬んで捨てたのか、誰かが履いて帰ったのか、夏子は必死に探しますが見つかりません。

雨が強くなる中、運動場で涙を流し続ける夏子にお母さんが迎えに来て、靴屋に連れて行く優しい母の姿が印象的です。母は、もう一度同じ長靴を作ってもらうよう靴屋に頭を下げ、事情を汲んでもらえると信じていました。母の温かい言葉に夏子は安心し「明日には明日の風が吹く」と告げられて、心が軽くなります。

ドラマ化

1961年には、NHKによって単発ドラマとして放送され、1962年からは連続テレビ小説として放送されました。このドラマは、壺井が描いた短編を基にしながらも、複数の短編を組み合わせ、物語を新たに構成したもので、全306回に渡って放送されました。多くの視聴者に愛され、長年にわたって影響を与え続けた作品です。

結論

「明日の風」は、母の愛と子供の成長を基にした普遍的なテーマを描いた心温まる物語であり、壺井栄の代表作の一つです。テレビドラマとしての再構築も効果的で、多くの視聴者に感動を与える作品となりました。

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