あの夏、いちばん静かな海。

映画『あの夏、いちばん静かな海。』の概要

『あの夏、いちばん静かな海。』は、1991年に公開された日本映画で、監督はビートたけし（北野武）が務めました。この作品は、監督としては3作目であり、初めて久石譲が音楽を担当しています。キャッチコピーには「浜辺に捨てられた折れたサーフボード、もう誰も振り向かなかったけど二人にとっては大切な宝物だった」「一生にいちど、こんな夏がくる」というメッセージが込められています。

ストーリー

物語は、聾唖の青年・茂が主人公です。彼はゴミ収集の仕事をしており、廃棄物の中から先端の欠けたサーフボードを見つけて持ち帰ります。このボードを修理し、同じく聾唖者の恋人・貴子を誘って海に行くことから、彼のサーフィンライフが始まります。茂はサーフィンに夢中になり、貴子は砂浜でその様子を見守ります。

時間が経つにつれ、茂はサーフィンの腕を上げ、地元のサーフィン仲間たちとも交流を持つようになります。近隣のサーファーたちからは最初はバカにされていましたが、次第に彼の成長を認めるようになります。しかし、仕事に影響が出始め、上司から叱責されることも。しかし、彼の奮闘ぶりを認めた上司の理解もあり、茂は大会に出場し、見事入賞を果たします。

心温まる物語の中でではありますが、ある日、貴子が海に行くと、茂の姿は見当たらず、彼のボードだけが漂っているという切ない結末が待ち受けています。このラストシーンは観客の間で様々な解釈を生み出しました。

主要キャスト

• - 茂: 演 - 真木蔵人

ゴミ収集の仕事をする聾唖の青年。サーフィンに目覚め、熱心に練習を重ねますが、時には周囲を顧みない傾向もあります。

• - 貴子: 演 - 大島弘子

茂の恋人で同じ障害を持つ女性。いつも茂を温かく見守り、彼の成長を支えます。

• - 中島: 演 - 藤原稔三

茂がサーフボードを購入するサーフショップの店長。彼のことを気にかけ信頼を寄せています。

この他にも、サーフィンを共に楽しむ少年たち、仲間たちなど多彩なキャラクターが登場し、物語を盛り上げます。

作品の評価

本作は、北野映画特有の「キタノ・ブルー」と称される青の映像美が印象的で、後に多くの映画に影響を与えるスタイルとなりました。また、本作はバイオレンスやヤクザ描写を排除した恋愛・青春映画としても話題を呼びました。映画を観た淀川長治は、その内容に感動し、北野への印象を良い方向に変えたという逸話もあります。

音楽については、久石譲がサウンドトラックを担当し、特に「Silent Love」は観客に深い印象を与えました。彼が北野映画に起用された経緯には、独自のスタイルを持つ北野監督との相性の良さが影響しているとされています。

受賞歴

本作は多くの映画賞にノミネートされ、いくつかの受賞も果たしています。特に日本アカデミー賞では最優秀音楽賞や新人俳優賞を受賞し、映画界での評価が高まるきっかけとなりました。

こうした背景や評価から、『あの夏、いちばん静かな海。』は、リリースから数十年経った今でも色あせることのない名作として、多くの映画ファンに愛されています。

もう一度検索