あべこべ物語

あべこべ物語：ミルク泥棒と怪力ネズミの大騒動

1947年公開の『あべこべ物語』(原題:Dr.Jekyll and Mr.Mouse)は、人気アニメシリーズ『トムとジェリー』の中でも特に有名な作品の一つです。第20回アカデミー賞短編アニメ賞にもノミネートされた、高い評価を得ている短編アニメーション作品と言えるでしょう。ビデオやDVDでは『ジキル博士とネズミ氏』、『怪力ジェリー』など、様々なタイトルでリリースされていることも特徴です。

物語の始まりは、いつものように届けられたミルクから

ある朝、トムは届けられたミルクをこっそり横取りしようとします。しかし、ジェリーもそのミルクを狙っており、トムが目を離した隙に巧みにミルクを盗み飲みします。

自分のミルクを横取りされたことに激怒したトムは、ジェリーからミルクを奪還しようと様々な策略を仕掛けます。箱に閉じ込めたり、金庫に隠したりと、あらゆる手段を試みますが、ずる賢いジェリーはそれをあっさりとかわし、毎回ミルクを手に入れてしまうのです。

トムの復讐劇と、予想外の展開

ジェリーの知恵と狡猾さに業を煮やしたトムは、邪悪な計画を思いつきます。それは、劇薬を混ぜた「劇毒ミルク」を作り、ジェリーに飲ませるというものでした。

薄暗い部屋で、酸、漂白剤、殺虫剤、さらにはモスボールまで混ぜ合わせたトム。出来上がったミルクは、スプーンの先が炭化してしまうほど強力な毒性を持っていました。ハエが一口飲むと、金切り声を上げて即死するほどの恐ろしい毒薬です。

この劇毒ミルクをジェリーに飲ませ、復讐を果たそうと企むトム。しかし、ジェリーはトムの策略に気づかず、ミルクを飲んでしまいます。すると、ジェリーは悲鳴を上げ倒れましたが、すぐに起き上がり、信じられないことに筋骨隆々のマッチョネズミに変身したのです！

怪力ジェリーvs.トムの逆転劇

予想外の展開にトムは恐怖に慄きます。怪力化したジェリーは、トムを金庫から引きずり出し、コテンパンに叩きのめします。しかし、薬の効き目が切れると、ジェリーは元の姿に戻ってしまいました。

立場が逆転したトムは、今度はジェリーを追いかける羽目に。ジェリーは再び劇毒ミルクを飲んで怪力ネズミになろうとしますが、トムに邪魔され、ミルクをこぼされてしまいます。

追いかけっこは続き、最後はジェリーが冷蔵庫にトムを閉じ込めました。今度はジェリーがトム同様に劇薬を混ぜたミルクを作り始めますが、冷蔵庫から脱出したトムにそのミルクを奪われてしまいます。ミルクを飲み干したトムは、悪魔のような巨大マッチョ猫に変身しようとしますが、ジェリーがアンモニアを混ぜ忘れたことが災いし、逆に体が小さくなってしまうのです。

その後、ジェリーに殴られたり、尻尾をはじかれたりするたびに、トムの体はどんどん小さくなり、最後はノミほどの大きさになってしまいました。

あべこべになった立場

こうして、ネコとネズミの立場は完全に逆転します。最後は、ジェリーが蝿叩きでトムを追い回すという、なんとも皮肉な結末を迎えるのです。

この作品には、トムとジェリーに加え、トムの劇薬入りミルクを飲んで即死したハエも登場します。そして、この作品は『ジキル博士とハイド氏』をモチーフにしている点も興味深いところです。2014年にはテレビシリーズ『トムとジェリーショー』が放送され、ジェリーが怪力ネズミになるエピソードも存在しますが、そちらではトムが未遂に終わった悪魔のようなマッチョ猫となり、ジェリーを襲っています。

『あべこべ物語』は、予測不能な展開とコミカルな描写、そしてトムとジェリーの絶妙な掛け合いが魅力の作品です。ミルクを巡るいたずら合戦と、予想外の薬の効果による立場逆転劇は、観る者を飽きさせません。アニメーション史に残る名作として、多くの人々に愛され続けている作品です。

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