ありふれた事件

『ありふれた事件』の魅力と衝撃

1992年に公開されたベルギー映画『ありふれた事件』は、監督レミー・ベルヴォーによって制作された犯罪作品です。この映画は、自己愛的な連続殺人犯ベンの物語を描いており、その斬新な視点と衝撃的な内容が観客に強烈な印象を与えます。

ストーリーの概要

物語は、ベンという男を中心に展開します。彼は自作の詩や芸術について熱心に語り、恋人のヴァレリーと共にクラシック音楽を演奏したりする一見魅力的な人物です。しかし、彼の正体は異常な自己愛を持つ連続殺人犯です。映画クルーは彼の犯罪行為をドキュメンタリーとして撮影しており、ベンは無差別殺人を平然と自慢しながら、家族や友人を紹介します。

彼はあらゆる人々を標的にし、強盗殺人を繰り返します。撮影中にはクルーのメンバーが命を落とす場面もあり、それは「職業上のリスク」として扱われます。やがて、クルーのメンバーは単なる目撃者から同様の犯罪の共犯者へと変わっていき、衝撃の展開が続きます。一家を惨殺する際は、少年を抑えつけて彼が窒息死するのを手伝う展開に至ります。

ベンは自身の誕生日パーティーでも知人を殺すという冷酷さを持ち合わせており、友人が血まみれの姿でプレゼントを渡してくるなど、狂気に満ちた場面が続きます。徐々に彼の行動はエスカレートし、他の犯罪者との血みどろの抗争へと発展していきます。

制作の背景

本作は、低予算でありながらも非常に独自性が高い映画に仕上げられています。撮影は白黒で行われ、16ミリフィルムで制作されています。監督と脚本ともに手掛けたレミー・ベルヴォーを始めとする学生映画制作者たちは、自らの名前で作品に出演しており、リアルなドキュメンタリーのような手法が際立っています。特に、ポールヴールドは殺人犯ベンを演じ、ベルヴォーは映画監督役、ボンゼルは撮影担当として登場しています。

タイトルのフランス語原題「C'est arrivé près de chez vous」は「あなたの近所で起きた出来事」という意味で、ベルギーの日刊紙である『ル・ソワール』によるローカルニュース「les chiens ecrasse」に由来しています。このアクセスの身近さが、観客に一層の恐怖感を与えています。

本作の最大の驚きとして挙げられるのは、ポールヴールドの実際の両親が演じる両親の役割です。彼らは自分たちの息子が連続殺人犯として描かれることを知らずに撮影に参加しており、その事実は観客にさらなる衝撃を与えます。

結論

『ありふれた事件』は、その衝撃的な内容と革新的な視点によって、視覚的なショックを与える映画です。人間のダークさと、それを映し出すメディアのあり方を問い直す作品として、多くの思索を促すことでしょう。この作品は、単なる娯楽映画ではなく、社会に対する鋭い風刺を含んだ問題作として、今もなお観る者に深く記憶され続けています。

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