あるいは裏切りという名の犬

あるいは裏切りという名の犬

『あるいは裏切りという名の犬』（原題: 36 Quai des Orfèvres）は、2004年に公開されたフランスの刑事映画です。監督は元警察官という異色の経歴を持つオリヴィエ・マルシャル。1980年代に起きた実際の事件を基に、パリ警視庁を舞台にした男たちの権力争いと、その中で繰り広げられる裏切りと復讐を描いています。

ストーリー

パリ警視庁のBRI（捜査介入部）主任警視であるレオ・ヴリンクスと、BRB（強盗鎮圧班）主任警視のドニ・クラン。次期長官の座を争う2人は、性格も捜査手法も全く異なっていました。ヴリンクスは部下からの信頼も厚く、荒くれ者集団ながらも結束の固いチームを率いています。一方のクランは、出世のためには手段を選ばない冷酷な男で、BRBを強固な統制下に置いています。

そんな中、重火器を使用した現金輸送車襲撃事件が連続して発生。被害総額は200万ユーロ、死者は9名にものぼる凶悪事件に、警視庁長官はヴリンクスとクランに犯人逮捕を命じます。長官はヴリンクスに、犯人を逮捕した者を後任として推薦すると伝え、彼に期待を寄せます。しかし、出世を焦るクランは、ヴリンクスを出し抜こうと画策し、2人の対立は激化していきます。

情報屋のシリアンは、過去の恨みから同業者を殺害し、ヴリンクスにアリバイを依頼します。連続強盗犯の情報と引き換えに、ヴリンクスはそれを受け入れてしまいます。クランは長官に直訴するも、ヴリンクスの援護に回されてしまい、焦りを募らせます。犯人グループの次のターゲットを突き止めたBRIチームは、現行犯逮捕を試みますが、クランの暴走により銃撃戦となり、ヴリンクスの相棒が命を落としてしまいます。

次第に孤立していくクラン。内務調査が始まり、ヴリンクスもクランに不利な証言をする予定でした。しかし、クランはヴリンクスが殺人事件に関与しているという情報を掴み、彼を逮捕させます。ヴリンクスの逮捕に責任を感じたシリアンは、彼の妻カミーユに接触しようとします。その情報を得たクランは、カミーユとシリアンの乗った車を執拗に追跡し、事故に見せかけて2人を殺害してしまいます。

7年の刑期を終え出所したヴリンクスは、妻の死の真相を調べ始めます。そして、クランがカミーユの死を偽装するために、事故後に彼女を射殺した事実を突き止めます。警視庁長官に出世したクランを追い詰めたヴリンクスは、銃を突きつけます。しかし、クランはカミーユが事故で既に死亡していたと告白し、ヴリンクスはその言葉を信じて立ち去ります。その後、クランはヴリンクスを追って外へ出ますが、ギャングに襲われ命を落とします。ギャングは、かつてヴリンクスのチームに半殺しにされた男で、クランへの復讐を果たしたのでした。

全てが終わった後、ヴリンクスは成長した娘と共に、新たな人生を歩み始めるのでした。

キャスト

レオ・ヴリンクス：ダニエル・オートゥイユ
ドニ・クラン：ジェラール・ドパルデュー
ロベール・マンシーニ：アンドレ・デュソリエ
カミーユ・ヴリンクス：ヴァレリア・ゴリノ
* ユゴー・シリアン：ロシュディ・ゼム

リメイク

本作は、ロバート・デ・ニーロによってリメイクされることが決定しています。また、韓国では2019年に『ビースト』としてリメイクされています。

テーマ

本作は、警察内部の権力争いや不正、そして人間の欲望や葛藤をリアルに描いています。登場人物たちの複雑な人間関係や心理描写、そして衝撃的な展開は、観る者を深く引き込みます。正義とは何か、そして人間は何のために生きるのか。本作は、私たちに多くの問いを投げかけます。

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