ある日、突然。

ある日、突然。

2002年に製作されたアルゼンチンとオランダの合作によるドラマ映画です。原題はスペイン語で『TAN de REPENTE』、英題は『Suddenly』とされています。アルゼンチンの作家、セサル・アイラの短編小説『La Prueba (証明)』を原作とし、ブエノスアイレスを舞台に、偶然出会った三人の女性が繰り広げる奇妙な旅を、印象的なモノクロ映像で描き出しています。

この作品は、その独特な雰囲気と予期せぬ展開が注目を集め、カンヌ国際映画祭の批評家週間に選出されるなど、40を超える国際映画祭で上映され、高い評価を獲得しました。

物語の主人公は、ブエノスアイレスでランジェリーショップの店員として働くマルシアです。ごく普通の、どちらかというと自分に自信が持てないタイプの彼女は、変化のない日常を送っていました。しかし、ある日、街を歩いていると、パンクスタイルに身を包んだ少女、マオに突然声をかけられます。

マオは同性愛者であり、マルシアに一目で心を奪われたと、真っ直ぐな好意を伝えてきます。突然のアプローチに驚き、戸惑いを隠せないマルシアは、その場から逃げ出そうとします。ところが、マオと彼女と行動を共にしていたもう一人の少女、レーニンによって、マルシアは半ば強引に連れ去られてしまうのです。

目隠しをされて車に乗せられたマルシアがたどり着いたのは、見知らぬ場所でした。こうして、マルシアはマオ、そしてレーニンと共に、目的地も目的も不明な旅に出ることになります。予期せぬ形で始まったこの旅の中で、三人の間には独特な関係性が生まれていきます。旅の途中で、彼女たちはブランカやデリア、フィリップといった様々な人々と出会い、それぞれの人生や考え方に触れることになります。これらの出会いや、共に時間を過ごす中で起きる出来事が、特にマルシアの心境に変化をもたらしていく様子が描かれます。

作品は、突然日常から引き剥がされ、見知らぬ世界に放り込まれた主人公の混乱と、そこで見出すささやかな変化、そして登場人物たちが抱える孤独や葛藤、互いへの思いといった複雑な感情の機微を丁寧に捉えています。モノクロームの映像は、物語の非現実的な側面を強調しつつ、登場人物の内面や旅の雰囲気に深みを与えています。

主要なキャストとして、予期せぬ旅に巻き込まれる主人公マルシアをタチアナ・サフィルが演じ、彼女を強引に連れ出すマオ役をカルラ・クレスポ、マオと行動を共にするレーニン役をベロニカ・ハサンが務めています。その他の登場人物として、ブランカ役にアトリス・ティボーディン、デリア役にマリア・メルリーノ、フィリップ役にマルコス・フェランテが名を連ねています。

『ある日、突然。』は、単なる逃避行やロードムービーではなく、現代社会における人間関係の複雑さ、自己のアイデンティティの探求、そして予期せぬ出来事が人生にもたらす影響を描いた作品と言えるでしょう。特に、登場人物たちのセクシュアリティや関係性の多様性が描かれていることから、レズビアン・ゲイ映画という文脈でも語られることがあります。

この映画は、公式ウェブサイト（フランス語）、Cinema Topics、allcinema、KINENOTE、AllMovie（英語）、IMDb（英語）などで情報を参照することができます。


（この映画は、アルゼンチンとオランダの共同製作により、2002年に公開されました。上映時間は約92分です。）

もう一度検索