ある日突然…

毎日放送（MBS）が制作し、TBS系列の昼帯ドラマ枠「ドラマ30」にて1992年 8月3日から10月2日まで放送された連続ドラマです。全45話。本作は、ごく普通の日常を送っていた一人の主婦が、思いがけない出来事を機に一つの秘密を抱えることになり、その秘密が引き起こす周囲との関係性の変化や軋轢によって追い詰められ、最終的に突発的な逃避行へと至る様を描いた人間ドラマです。

あらすじ

物語の中心人物は、主婦の井村直子。彼女は平穏な家庭生活を送っているように見えましたが、内面では様々な苦悩を抱えていました。夫である義之には過去に離婚歴があり、その際に生じた愛人問題の余波が現在にも影響を与えています。また、義之の連れ子である桃子との間の微妙な関係性、そして同居する夫の母、すなわち姑であるちせとの間に横たわる嫁姑間の根深い対立も、直子の日常に暗い影を落としていました。

直子の人生が一変するきっかけは、ある雨の降る夜に訪れます。偶然乗り合わせたタクシーの中で、直子は偶然にも大量の現金が入った包みを拾得します。そのタクシーには、たまたま若い男性である冴木彰至も同乗していました。二人はその場で話し合い、拾った現金を山分けし、この出来事と現金の存在を誰にも打ち明けないという秘密を共有することを決めます。

この秘密を守り通すため、そして秘密を共有したことによる奇妙な絆が生まれたことから、直子と冴木はその後もひっそりと連絡を取り合い、会う機会を持つようになります。しかし、直子の普段とは異なる行動や、外出が増えたことに対し、家庭内で暮らす人々は次第に疑念を抱き始めます。特に姑のちせや連れ子の桃子は、直子が他の男性と不倫しているのではないかと勘繰り、彼女に冷たい視線を向けたり、問い詰めるような態度をとったりするようになります。周囲からの疑いの目が強まり、精神的に追い詰められた直子は、もはや家庭にも日常にも居場所を見出せなくなります。そして、秘密を共有する冴木とともに、現状から逃れるための逃避行という極端な選択をせざるを得ない状況に追い込まれていくのです。平凡な主婦であった直子の日常は完全に崩壊し、二人の先の見えない逃避行が幕を開けます。果たして、この逃避行の果てに待ち受ける運命とは何なのでしょうか。

制作背景と関連情報

本作の脚本は、宮内婦貴子が手掛けました。実はこの作品は、宮内氏が過去に執筆した脚本のリメイク版にあたります。オリジナルは、1978年にテレビ朝日系列で放送された「ポーラ名作劇場」枠の単発ドラマ『雨のしのび逢い』でした。過去の自身の脚本を、時代背景や昼ドラマという枠に合わせて改めて構築し直した作品と言えます。

また、主人公・井村直子を演じたのは女優のあき竹城です。彼女は役柄に説得力を持たせるため、撮影開始前に10kg以上の大幅な減量を行ったと報じられました（出典は日刊ゲンダイの記事）。役作りのために身を削るほどの努力をしたというエピソードは、作品への真摯な取り組みを示すものとして注目されました。

キャスト

主な出演者は以下の通りです。

井村直子: あき竹城
冴木彰至: 冴木彰至
井村義之（直子の夫）: 木村元
井村桃子（直子の夫の連れ子）: 倉本佳子
直子の夫の愛人: 根岸季衣
井村ちせ（直子の夫の母）: 荒木雅子
直子の夫の姉: 中原早苗
刑事: 川津祐介
その他: 雅薇、みやなおこ（直子の妹）、新海なつ（柚原の祖母の友人）

スタッフ

脚本: 宮内婦貴子
演出: 芝野昌之
制作: 毎日放送

主題歌

本作のテーマ曲には、シンガーソングライターである鈴木康博の楽曲「あなたに明日を」が採用されました。この楽曲は、作詞を大津あきら、作曲・編曲・歌唱を鈴木康博自身が担当しています。ドラマの展開に寄り添い、視聴者の心に響くメロディと歌詞で物語を彩りました。

『ある日突然…』は、日常が如何に脆い基盤の上に成り立っているか、そして一つの秘密が人間の心理や人間関係、さらには運命をいかに大きく変容させてしまうかを描いた作品です。昼ドラマらしいサスペンスフルな展開と、登場人物たちの複雑な感情の動きが描かれており、見ごたえのあるドラマとなっています。

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