あんしん財団

一般財団法人あんしん財団（正式名称：一般財団法人あんしん財団、読み：あんしんざいだん）は、主に日本の全国域で中小企業を対象とした各種事業を展開する法人です。その活動は、特定保険業としての労働災害補償共済の提供をはじめ、職場における災害予防活動の推進、さらには従業員の福利厚生や職場環境の向上に向けた助成など、多岐にわたります。主に被雇用者保険の適用対象外である中小企業の経営者を主要な対象としていますが、中小企業の経営者は労働者災害補償保険（労災保険）の特別加入制度を利用することも可能です。

かつての略称であった「KSD」は、「経営者災害補償事業団」の頭文字を取ったものです。類似の事業を行う団体として、近畿地方を中心に活動する一般財団法人日本フルハップが存在しますが、日本フルハップが「近畿KSD」と称していたのは、その前身である「近畿中小企業経営者災害補償事業団」という名称に由来しています。

あんしん財団の事業エリアは日本全国ですが、関西地方、中国地方、四国地方の2府13県は対象外とされています。このため、日本フルハップとの事業競合は、主に九州地方（沖縄県を除く）に限定されています。九州地方における両者の棲み分けとして、あんしん財団は主に普通銀行や信用組合を取扱金融機関としているのに対し、日本フルハップは信用金庫を主に取り扱うことで、一定の住み分けが図られています。

沿革

財団の歴史は、1964年（昭和39年）に中小企業経営者災害補償共済会として設立されたことに始まります。翌1965年（昭和40年）には、財団法人への移行に伴い、財団法人中小企業経営者災害補償事業団と改称しました。1969年（昭和44年）には東京都から財団としての許可を取得。その後、1994年（平成6年）に財団法人ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団、2003年（平成15年）には財団法人中小企業災害補償共済福祉財団と名称変更を重ねました。2000年（平成12年）には、世間から注目を集めることとなったKSD事件が発生しています。そして、2015年（平成27年）に一般財団法人へ移行し、現在の名称である一般財団法人あんしん財団となりました。

労働裁判を巡る経緯

あんしん財団は過去に、職員の配置転換を巡る労働裁判の当事者となりました。複数の女性および男性職員計7人が、財団から命じられた配置転換は違法であり、これにより精神的な苦痛を受けたなどとして、財団に対し損害賠償を求める訴訟を提起しました。

各審の判断

東京地方裁判所（第一審）

2018年（平成30年）2月26日、第一審である東京地方裁判所（江原健志裁判長）は、女性職員4人に対し、慰謝料など合計440万円を財団が支払うよう命じる判決を下しました。一方で、男性職員3人に対する転勤命令については、適法であると判断しました。

東京高等裁判所（控訴審）

この第一審判決に対し、財団側が控訴しました。2019年（平成31年）3月14日、控訴審を担当した東京高等裁判所（村田渉裁判長）は、第一審で認められた女性職員4人に対する慰謝料請求を全て棄却しました。この高裁判決では、配置転換命令等が人事権の濫用にはあたらないと判断が示されました。

最高裁判所

東京高等裁判所の判決を不服とした原告側は、最高裁判所へ上告しました。2020年（令和2年）3月10日、最高裁判所第三小法廷（宇賀克也裁判長）は、原告側による損害賠償等請求の上告を棄却する決定を下しました。これにより、当該配置転換命令、それに伴う降格処分や職種変更などの有効性が最終的に確定しました。

その後の動き

最高裁判所の決定により配置転換命令等の有効性は確定しましたが、2015年（平成27年）4月1日付のこの配置転換命令を契機として、心身に不調をきたしたと主張する女性職員2名が、労働基準監督署から労働災害の認定を受けました。これに対し、あんしん財団は国および当該女性職員本人に対し、労災認定の取り消しを求める行政訴訟を提起しており、この件については現在も係争中です。

また、一連の争議に関連し、財団が職員に対して資料を配布したり説明を行ったりした行為について、東京都労働委員会は、労働組合に対する支配介入に該当するとして、2021年（令和3年）6月15日付で財団に対し命令書を交付しています。

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