あんにょんキムチ

『あんにょんキムチ』は、1999年に公開された松江哲明監督によるドキュメンタリー映画です。この作品は、松江監督が日本映画学校の卒業制作として手がけたもので、監督自身の家族の歴史を記録した私的な作品となっています。

2000年8月にはBOX東中野で劇場公開され、その後2006年にはシネマアートン下北沢でアンコール上映も行われました。タイトルにある「アンニョン」という言葉は、韓国語で「こんにちは」と「さようなら」の両方の意味を持ちます。監督はこの言葉に込められた二面性を捉え、皮肉を込めてタイトルに採用したと語っています。

映画は、監督の祖父である松江勇吉（劉忠植）氏を中心に展開されます。勇吉氏は、戦争中に韓国から日本へ渡り、日本で生涯を終えました。映画の中で、監督は祖父の最期の言葉が「哲明バカヤロー！」だったというエピソードを語り、その言葉に込められた複雑な感情を探求していきます。在日韓国人三世である監督の視点を通して、祖父や家族が歩んできた歴史を振り返り、笑いと涙に満ちた感動的な物語が展開されます。

『あんにょんキムチ』は、国内外の映画祭で高い評価を受けています。1999年には韓日青少年映画祭で監督賞を受賞、同年には山形国際ドキュメンタリー映画祭でアジア千波万波特別賞とNETPAC（最優秀アジア映画）特別賞を受賞しました。さらに、東京国際映画祭のニッポン・シネマ・ナウ部門や、ソウルドキュメンタリー映画祭のフォーカス・オン・ジャパン部門にも出品されています。2000年には香港国際映画祭やスイス・ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭にも出品され、国際的な注目を集めました。

この映画は、単なる家族の記録にとどまらず、在日韓国人のアイデンティティや歴史、そして家族の絆といった普遍的なテーマを描き出しています。松江監督の個人的な視点を通して、観客は自身の家族やルーツについて深く考えさせられるでしょう。ユーモアを交えながらも、感動的で心温まるドキュメンタリー作品として、多くの人々に愛されています。

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