いつもポケットにショパン

『いつもポケットにショパン』は、くらもちふさこが手がけた日本の音楽漫画で、1980年2月から1981年7月まで、漫画雑誌『別冊マーガレット』に連載されていました。この作品は、クラシック音楽をテーマにしており、特に主人公の幼馴染2人が音楽を通じて成長する姿が描かれています。連載期間中にはドラマが製作され、2019年と2022年には朗読劇としても上演され、大きな反響を呼びました。

作品の背景

作者のくらもちふさこによると、この作品は「主人公の幼少期」「エンディングのセリフ」「主人公である麻子」の三つの要素が最初から決まっていたといいます。また、作品のタイトルは最終シーンのセリフから取られたものです。彼女はその中で、従来の作品では「ヒロイン」よりも「ヒーロー」に重きを置いていたが、本作では「ヒロイン」の魅力を引き出すために恋愛描写を控えめに設定。麻子のライバルである季晋が「少し不幸になる」場面は設けているものの、全体的には「ほのぼの系」のストーリーを目指していました。しかし、物語が進展するにつれて意図とは異なる「ドラマチックな展開」に変わってしまったことに作者は戸惑いを覚えたといいます。彼女はこの経験を経て、後の『天然コケッコー』では「ゆったりとしたペースのキャラまんが」を描くことができたと振り返っています。

演奏シーンの工夫

この作品の特徴的な要素の一つは、音楽演奏シーンでの表現方法にあります。音楽の音符や効果音を使用せず、演奏者の指や表情、コマ割りを工夫することで楽曲の情緒を表現しています。くらもち自身は作画に効果音を加えることがあまり好みではなかったため、音を描かないシーンを意図的に作成しました。また、彼女は音楽に詳しくなかったものの、音楽大学出身の担当編集者の妻から多くのインスピレーションを得ることができました。音楽学校での方言や学生たちの個性を観察し、本作の登場人物のモデルにも活かしています。

あらすじ

物語は須江麻子と緒方季晋の幼馴染の2人が主人公です。二人は同じピアノ教室に通い、いつも一緒に遊ぶ仲だったが、季晋は中学進学を機にドイツへ留学。その結果、彼は列車事故に遭遇し、音信不通に。時が経過し、高校生となった麻子は季晋が帰国していることを知りますが、再会した季晋は以前とは異なり、彼女をライバル視するようになります。その背景には、互いの母親にかかる因縁が隠されていました。

麻子はピアノをやめようとしますが、音楽教師の松苗に選ばれ、学生コンクールへの出場を決意します。音楽の練習を重ねる中、彼女は父親との隠された過去や母親との和解を経験します。一方、季晋は母親の願いを受け継ごうと奮闘するあまりケガをしてしまいますが、彼女から過去を知ることで解放され、素晴らしい演奏を披露します。最終的に、麻子は一次予選で落ちるものの、季晋が選手としての道を選ぶものの、二人の関係はより良い方向へと進展します。

登場人物

- 須江麻子：本作の主人公。音楽学園に通い、成長していく姿が描かれる。
- 緒方季晋：麻子の幼馴染で、ピアニストとして成長を目指す。
- 上邑恭二：堂園三羽烏の一員で、麻子との競争に影響を与えるキャラクター。
- 須江愛子：麻子の母で、プロのピアニスト。
- 緒方華子：季晋の母で、元ピアニスト。

書誌情報

本作は集英社より全5巻が出版されています。また、集英社文庫版もあり、アニメ化やドラマ化されたり、朗読劇としても上演されています。その多様なメディア展開により、作品の魅力はさらに広がっています。この作品を通して、読者は音楽の感動と人間関係の深さについて考えるきっかけを持つことができるでしょう。

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