いぶき (人工衛星)

いぶき（GOSAT）の概要

いぶき（GOSAT：Greenhouse gases Observing Satellite）は、日本の環境省、国立環境研究所（NIES）、宇宙航空研究開発機構（JAXA）が共同で開発した、温室効果ガスを観測するための衛星です。地球温暖化の原因となる二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの濃度分布を、宇宙から観測することができるように設計されています。

開発の背景

いぶきは、温室効果ガス観測が重要だとされる京都議定書の第一約束期間（2008年～2012年）において、温室効果ガスの濃度分布データを取得するために開発されました。1997年に京都で開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議（COP3）では、京都議定書が採択され、これを受けて温室効果ガスの観測ミッションが求められました。その中で設定された目標は以下の通りです。

• - 温室効果ガスの全球濃度分布を測定する
• - 二酸化炭素の吸収排出量の推定誤差を半減させる
• - 温室効果ガス観測技術の基盤を確立する

観測機能と技術

いぶきは、2009年1月23日に打ち上げられ、以降精度の高い観測を行っています。観測データは、地球全体を約180 kmのメッシュで区切った約56,000個所から得られます。これにより、以前の測定網よりも大幅に向上したデータの収集が可能となり、京都議定書で定められた二酸化炭素の排出量削減の監視に役立っています。

観測装置

いぶきには、主に2つの観測装置があります。
1. TANSO-FTS: 主センサであり、二酸化炭素とメタンを測定します。地表面から反射された太陽光や大気から放射される光を分光し、濃度を算出します。
2. TANSO-CAI: 副センサで、雲やエアロゾルの有無を確認し、FTSの測定データがより正確になるよう補正します。

プロジェクトの実施と進展

いぶきの開発には、環境省が主に行政面での支援を行い、観測装置の開発やデータの取得をJAXAが担当し、NIESはデータの解析を担当しています。この連携により、効率的にデータを取得し、分析する体制が整えられています。

いぶきは、2008年の打ち上げ以来、数回の成果発表を重ねており、特に2009年5月には初めて地球規模の温室効果ガスの解析結果を発表しました。その後も、定期的にデータ処理の精度向上や技術的な改良を行なっています。

今後の展望

2018年には、観測精度をさらに向上させることを目的にした2号機GOSAT-2が打ち上げられました。これにより、ブラックカーボンやPM2.5などの微小粒子状物質の監視も可能になりました。いぶきは、今後も温室効果ガスの監視と気候変動の予測に重要な役割を果たすことが期待されています。

まとめ

いぶき（GOSAT）は、温室効果ガスの観測を通じて、地球環境の保護に寄与する重要な衛星です。その成功は、多くの機関の協力と先進的な観測技術に支えられています。気候変動が喫緊の課題となっている現代において、いぶきは持続可能な未来の実現に向けて、必要なデータを提供し続けています。

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