いまさら翼といわれても

『いまさら翼といわれても』の概要

米澤穂信が贈る短編推理小説集『いまさら翼といわれても』は、2016年11月30日に発売された書籍で、彼の人気シリーズ「〈古典部〉シリーズ」の第6作にあたります。英題は「Last seen bearing」となっており、本作には表題作を含む6編の短編が掲載されています。まずは、刊行の背景やその内容に迫ってみましょう。

発売と評価

本書は『野性時代』や『文芸カドカワ』といった雑誌にそれぞれ発表された短編が収められており、出版から2日後の12月2日には早くも重版が決定するなど、早速の反響を呼びました。また、各種のミステリーランキングでも高い評価を受けており、2017年の「週刊文春ミステリーベスト10」では第8位、2018年の「このミステリーがすごい!」では第17位など、多数の媒体でその魅力が認められています。

各短編の紹介

1. 箱の中の欠落

神山高校の生徒会長選挙を舞台にしたこの短編では、開票結果の水増しが発覚し、再選挙が行われることに。その過程で選挙管理委員の1年生が疑われ、里志と奉太郎がその背後にある真実を探ります。

2. 鏡には映らない

中学時代の卒業制作にまつわるエピソードで、摩耶花が思い出話を通じて奉太郎の手抜きデザインの真相に迫る物語です。混乱の先にある真実を探し求める彼女の心情が描かれています。

3. 連峰は晴れているか

この物語は、奉太郎が中学時代の教師のちょっとした発言を思い出し、それに伴って過去の出来事を掘り下げていくところから展開されます。教師が登山家だったことが明らかになり、その背景にあるドラマが浮かび上がります。

4. わたしたちの伝説の一冊

漫画研究会の内部対立を描いたエピソード。摩耶花は、同人誌制作の依頼を受けるも、派閥間の緊張が高まる中での葛藤を抱えることになります。彼女の創作意欲と仲間との関係が試されるストーリーです。

5. 長い休日

奉太郎が神社を訪れ、えるとの交流を通じて自身のモットーのルーツを語る心温まる短編です。日常の中の小さな発見が、彼にどのような影響を与えたのかが描かれています。

6. いまさら翼といわれても

シリーズのタイトル作で、摩耶花から電話での依頼を受ける奉太郎が、合唱祭での失踪事件の謎を追う物語です。限られた手がかりから真実を見出す奮闘が描かれています。

登場人物

主要登場人物には、奉太郎、える、里志、摩耶花があり、それぞれに個性的なキャラクター設定がなされています。奉太郎の省エネ主義や、えるの探求心、里志の知識欲、摩耶花の毒舌は物語を彩ります。

まとめ

『いまさら翼といわれても』は、短編それぞれが独特のテーマを持ちつつも、キャラクター間の緊密な関係性が作品全体を通じて織りなす美しいハーモニーが特徴です。米澤穂信の繊細な筆致が光るこの短編集を、ぜひ手にとってその魅力を感じて欲しいと思います。

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