うしかい座イータ星

うしかい座η星（η Boo / η Boötis）は、うしかい座に位置する3等星の恒星です。この星は、黄色準巨星に分類され、赤色巨星へと進化を始める段階にあると考えられています。

特徴

うしかい座η星の最大の特徴の一つは、その金属量です。太陽の約2倍という高い金属量を持つ、珍しい金属過剰星（SMR星）として知られています。これは、星の形成時に周囲のガスや塵に多くの金属元素が含まれていたことを示唆しています。

また、うしかい座η星は分光連星でもあります。伴星は白色矮星である可能性が高く、約1.35年の周期で主星の周りを公転しています。この伴星の存在は、主星の進化過程や特性に影響を与えていると考えられます。

名称の由来

うしかい座η星の固有名である「ムフリッド (Muphrid)」は、アラビア語の「武装したシマーク」または「槍持ちのシマーク」を意味する「al-simāk al-rāmiḥ」に由来します。元々この言葉は、うしかい座α星を指していました。「シマーク(simāk)」の正確な意味は不明ですが、槍を表す星々が後に区別され、η星を含む近隣の星々が槍に見立てられました。または、η星が単独で「槍」に見立てられたこともあったようです。アラビア語で「単独で」を意味する「mufradan」という言葉が、星の名前の一部として誤認され、「mufrad al-rāmiḥ」と書かれるようになりました。それがさらに略されて誤って「Muphrid」となり、現在のη星の固有名として使われるようになった経緯があります。

2016年9月12日、国際天文学連合（IAU）の恒星命名ワーキンググループ（WGSN）は、「Muphrid」を正式にうしかい座η星の固有名として承認しました。これにより、うしかい座η星は、学術的な名称と合わせて、歴史的な固有名でも呼ばれることになりました。

うしかい座η星は、その特異な金属量や連星であるという特徴から、天文学的な研究対象として非常に重要です。また、その名前の由来にも歴史的な背景があり、天文学と文化の繋がりを示す好例と言えるでしょう。

もう一度検索