うたかたのオペラ

アルバム『うたかたのオペラ』について

1980年9月25日にリリースされた『うたかたのオペラ』は、加藤和彦の6枚目のソロ・アルバムであり、西ベルリンで制作された重要な作品です。このアルバムは、安井かずみとの共同作業による『ヨーロッパ三部作』の一環として位置付けられています。前作『パパ・ヘミングウェイ』の制作を経て、加藤は1920年代のベルリンというテーマに興味を持ちました。この時期の文化や作品に影響を受けながら、新たなアルバムの構想を練ることになります。

テーマとレコーディング

『うたかたのオペラ』は、1920年代のベルリンという背景を持っており、加藤は当時の文化を音楽で表現しようとしました。レコーディングは、ベルリンの壁の近くに位置する「ハンザ・バイ・ザ・ウォール」で行われ、ミュージシャンたちは合宿形式で活動し、制作に集中しました。オリジナルメンバーにはYMOのメンバーが予定されていましたが、坂本龍一が急病で参加を断念し、代わりに矢野顕子が参加することになりました。1980年7月に渡独し、ベルリンの特徴的な環境が音楽制作に大きな影響を与えました。

音楽と収録曲

本作には多様な楽曲が収められており、その中でも特に「うたかたのオペラ」「ルムバ・アメリカン」「パリはもう誰も愛さない」「ラジオ・キヤバレー」などが注目を集めました。これらの曲は、後に2017年にリリースされたコンピレーション・アルバム『ヨーロッパ三部作・ベストセレクション』にも収録されています。特に「ルムバ・アメリカン」は、加藤のベルリン滞在中に出会った女性をモデルにした歌詞が印象的です。

アートワークと再発

アルバムのアートディレクションには奥村靫正が携わり、ロシア構成主義の影響を受けたカバーが制作されました。初回プレス版は異なる4種類のカバーが用意され、特に複数のカバーを並べると一つの大きなデザインが完成する工夫が施されています。1983年に加藤が新しいレコード会社に移籍した際、アルバムのデザインは一新されましたが、2004年のリイシューで元のデザインに戻されました。

ボーナスEPとリミックス

初回プレスの10万枚には、前作の「アラウンド・ザ・ワールド」のダブ・ミックス・ヴァージョンが収録された特別な7インチEPが含まれていました。また、続いてリリースされたコンピレーション・アルバムでは、「ルムバ・アメリカン」がリミックスされて登場したこともあり、オリジナルバージョンとは異なる印象を与えました。これらのリミックス音源はその後のリリースでも使用されることになります。

舞台化と評価

『うたかたのオペラ』は何度か舞台化され、様々な形でその物語が再現されています。特に2009年には横内謙介の脚本により、戦時下を舞台にした作品が大阪維新劇場で初演されました。加藤和彦の音楽とストーリーが新たな形で表現され、多くの観客に感動を与えました。

このアルバムは、加藤和彦の音楽的探求と文化への深いリスペクトを表現した作品で、今もなお多くのリスナーに愛されています。彼の音楽は、ただのエンターテインメントに留まらず、文化的なメッセージを持ち続けています。

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