おかしなおかしな大泥棒

『おかしなおかしな大泥棒』（原題：The Thief Who Came to Dinner）は、1973年製作のアメリカ合衆国発のコメディ映画です。バッド・ヨーキン監督、ウォルター・ヒル脚本による本作は、職を失ったコンピューターエンジニアが、意外な転身をする物語を描いています。

主人公は、コンピューター技術の発達により職を失ったウェブスター。失業のショックからか、彼は突如として泥棒になることを決意します。独学で泥棒の技術を磨き上げたウェブスターは、新聞記事で知った実業家ヘンダーリングの家族旅行をねらいます。

彼の初仕事は驚くほどあっけなく成功。宝石を盗み取るだけでなく、ヘンダーリングの隠された弱みまで手に入れるという成果をあげました。しかし、ウェブスターはそこで満足しませんでした。ヘンダーリングの書斎にあったチェスのボードに目を奪われ、いたずら心からチェスの駒の配置と動きを記したメモを残していったのです。

この奇抜な行動が、ウェブスターの新たな特徴となります。その後も彼は次々と空き巣を成功させ、必ずチェスの駒とメモを残していきました。このことから、彼は“チェス泥棒”という異名で呼ばれ、世間から注目を集める存在になっていきます。

泥棒としての活動を通して、ウェブスターはローラという女性と知り合います。ローラは、彼の正体を知った上で、彼と共に犯行を重ねるようになります。2人の関係は、単なる共犯関係を超えた、特別な絆へと発展していく様子が描かれています。

しかし、ウェブスターの活躍は、保険会社の調査員デイブの目を逃れませんでした。デイブは、巧妙な手口で次々と成功を収める“チェス泥棒”を追跡し、彼の逮捕に全力を注ぎます。

ウェブスターとデイブ、そしてローラ。3人の攻防は、スリリングでありながらもユーモラスな展開を見せ、観る者を飽きさせません。ウェブスターの予測不能な行動、そして、彼を取り巻く様々な人物たちの思惑が複雑に絡み合い、物語はクライマックスへと向かいます。

『おかしなおかしな大泥棒』は、単純な泥棒映画ではありません。職を失った男の再生、そして、予期せぬ出会いと友情、そして追いかける者と追われる者のスリリングな駆け引きなど、様々な要素が複雑に絡み合った、奥深い人間ドラマが描かれています。

チェスの駒というユニークなモチーフ、そして、予想外の展開が続く痛快なストーリーは、観る者に忘れられない印象を与えます。この作品は、軽妙なコメディタッチでありながらも、人生における選択や、人間関係の深さについて考えさせる、見応えのある映画と言えるでしょう。

この映画は、単なるエンターテインメントとしてだけでなく、現代社会における不安や、人間の心の機微を繊細に描き出している点も高く評価できます。一度観たら、忘れられない、そんな作品です。

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