おとなの防具屋さん

おとなの防具屋さん



『おとなの防具屋さん』は、漫画家・斐宮ふみ氏によって描かれるファンタジー世界の日常系コメディ漫画です。コミックスマートが運営するウェブコミックサービス『GANMA!』にて、2017年9月15日から連載がスタートし、現在も月1回のペースで金曜日に最新話が公開されています。

物語は、出稼ぎのために自身の村から町へやってきた、職探しの青年カウツの視点から始まります。彼は偶然見かけた店員募集の貼り紙に誘われ、一軒の防具屋を覗き込みます。そこでカウツが出会ったのは、どこか胡散臭い雰囲気を持つ店主のナーデンと、女性店員のリリエッタでした。彼らとのやり取りの中で、カウツは店の経営が破綻寸前であること、そしてその大きな理由が金銭管理の驚くべきずさんさにあることを知ります。持ち前の正義感と真面目さから、この状況を見過ごすことができず、カウツは店の再建を手伝うために、そこで働くことを決意します。

この防具屋の最大の特徴は、取り扱っている商品が、一般的な鎧や兜ではなく、極めて露出度の高い「セクシー系防具」であるという点です。一見すると実用性よりも見た目を重視したように思えるこれらの装備ですが、実はそれぞれに独自の機能性が盛り込まれており、これが物語にユニークな要素を加えています。

主要な登場人物たちは、皆強烈な個性の持ち主です。

カウツ:この物語の主人公。19歳の青年で、求職者から一転、防具店の店員となります。故郷のルボンの村から町へ出てきました。特別な能力や力を持たない普通の人ですが、才能はあるものの社会性や常識に欠けるナーデンやリリエッタの間で、貴重な常識人かつツッコミ役として活躍します。アニメ版では、リリエッタに危機を救われたことが、彼が店にたどり着くきっかけとして描かれています。

リリエッタ:店の看板娘を務める18歳の少女です。彼女もまた、店主のナーデンほどではないにしても、損得勘定や一般的な社会通念には疎いところがあります。しかし、ナーデンの独自の感性や目標に対しては深い敬意を払っています。セクシー装備についても、女性の魅力を引き出す良い製品として肯定的に捉えています。華奢な見た目とは裏腹に、測り知れないほどの怪力の持ち主であり、普段はその力が暴走しないよう、ナーデン特製の装備で抑制しています。アニメ版では、彼女が大量のスライムに襲われていたカウツを助けたことから二人の出会いが描かれます。

* ナーデン:防具屋の店主。29歳の男性です。男性であるカウツですら見惚れるほどの美しい容姿を持っています。「全ての女性冒険者にセクシー装備を着てほしい」という純粋な願望を抱いており、そのための装備を見抜く目利きは確かです。しかし、経営感覚や一般常識が致命的に欠落しているため、店を倒産寸前に追い込んでしまっています。食事にも困るような状況でもエロ装備を見て満腹感を覚えるなど風変わりな人物ですが、リリエッタやカウツの生活を最優先するなど、店主としての責任感や人格者らしい一面も持ち合わせています。

彼ら以外にも、カウツと共に故郷から来た愛らしいラビッタ族のモクク、店の常連で凄腕剣士のフレアリカ、関所に勤めるエルフの兵士でナーデンの友人であるセラス、そしてナーデンとエロ装備への愛を語り合う魔法使いのミィナなど、物語を彩る個性豊かなキャラクターたちが多数登場し、賑やかな日常や騒動を巻き起こします。

本作はウェブ連載の好評を受け、アース・スター エンターテイメントよりコミックスとして全4巻が刊行されています。さらに、メディアミックスとしてテレビアニメ化も実現しました。2018年10月から12月にかけて第1期が放送され、その後dアニメストアにて新作エピソードとなる『おとなの防具屋さん(裏面)』が配信されました。そして2021年1月から3月には第2期『おとなの防具屋さんII』が放送されています。アニメ版では、原作には登場しないオリジナルキャラクターが加わったり、他のGANMA!連載作品のキャラクターが登場するなど、アニメ独自の展開も見られます。特にラグジュアリー版と呼ばれるバージョンでは、アイドルグループHKT48のメンバーが声優として参加するなど、様々な形でファンを楽しませています。

セクシー装備という斬新な設定と、それに惹きつけられる多様なキャラクターたちが織りなすコメディは、読む人、観る人に独特の笑いと癒やしを提供してくれます。経営難の防具屋がカウツたちの奮闘によってどう変わっていくのか、個性的な面々の日常がどのように展開していくのかが、本作の大きな見どころと言えるでしょう。

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