おはようおかえり

『おはようおかえり』：京都を舞台にした、笑いと涙の群像劇

『おはようおかえり』は、漫画家・鳥飼茜氏による人気作品です。2010年から2013年にかけて連載され、単行本は全5巻で発売されました。舞台は古都・京都。線香や香を扱う老舗「福寿堂香舗」で働く25歳の主人公、堂本一保とその二人の姉、そして彼を取り巻く人々の恋愛や日常を描いた、心温まるコメディです。

個性豊かな登場人物たち

主人公の一保は、几帳面で家事全般に堪能な好青年。しかし、姉二人、奈保子と理保子は、美人だがずぼらで、一保のマンションに居候同然の生活を送っています。

姉である奈保子はバツイチで、元夫との間に子供はいません。結婚生活では、姑からの過剰なプレッシャーに苦しみ、脱毛や拒食症に悩まされた過去を持っています。一方、妹の理保子は高級アクセサリー店を経営するキャリアウーマン。一見華やかな彼女ですが、妻子のある大学教授と不倫関係にあるという一面も持ち合わせています。

一保の恋人である有里恵は、関東出身の大学生。一保の優しさに惹かれながらも、強引にアプローチしてくる同級生・桜井に揺れる姿が描かれます。

福寿堂香舗の面々も魅力的です。社長の福住は、会社の再建に成功したカリスマ経営者。社員の瀬尾や中野、長田といった個性豊かな面々も、物語に彩りを添えています。

さらに、物語には様々な登場人物が登場します。中野は、結婚を控えた若き女性社員。彼女の恋人の岸は、京都大学院生です。一保と合コンで出会う橋口は、過去の辛い経験を乗り越えて、新たな人生を歩もうとする女性です。そして、奈保子の元夫・松嶋や、理保子の不倫相手である深見教授といった、物語を複雑に絡ませる重要な人物も登場します。

京都の街並みが織りなす物語

物語は、京都の美しい街並みを背景に展開します。古都の情緒あふれる風景は、登場人物たちの感情をより一層引き立て、作品全体の雰囲気を豊かにしています。一保の働く老舗や、姉が経営するアクセサリー店、そして登場人物たちが暮らすマンションなど、具体的な場所が描写されることで、読者は物語の世界に自然と入り込んでいくことができるでしょう。

多様なテーマと魅力

『おはようおかえり』は、恋愛模様だけでなく、家族や仕事、そして人生における様々な選択をテーマにしています。登場人物たちの複雑な人間関係や、それぞれの抱える悩み、葛藤などがリアルに描かれ、多くの読者の共感を呼びました。

特に、奈保子の過去や理保子の不倫、そして一保の優しさゆえの葛藤など、現代社会の様々な問題が繊細に描かれている点が、この作品の魅力の一つと言えるでしょう。また、登場人物たちの成長や変化を通して、読者自身の人生を見つめ直すきっかけを与えてくれる、そんな作品となっています。

2013年には、『ダ・ヴィンチ』誌上で、京都弁を操る主人公・一保が「方言男子」として取り上げられるなど、作品は高い評価を得ています。

『おはようおかえり』は、笑いあり涙ありの、心温まる物語です。京都の美しい街並みを舞台に、個性豊かな登場人物たちが織りなす、忘れられない感動体験を味わってみてください。

もう一度検索