おはよう川村龍一です

おはよう川村龍一です

「おはよう川村龍一です」（おはようかわむらりゅういちです）は、毎日放送ラジオ（MBSラジオ）で平日朝に生放送されていた人気ラジオ番組です。メインパーソナリティを務めた川村龍一の名前が冠されたこの番組は、MBSラジオの早朝の顔として多くのリスナーに親しまれました。

番組は1983年10月10日、「おはようMBS」というタイトルでスタートしました。当初の放送時間は午前6時30分から7時40分でした。その後、1986年10月からはメインパーソナリティである川村龍一氏の名前が加わり、「おはようMBS 川村龍一です」と変更され、さらに後には「おはよう川村龍一です」という形に落ち着きました。

長らく放送時間に変更はありませんでしたが、2001年10月1日、「朝はトコトン菊水丸」という新番組が6時45分から始まるのに伴い、放送時間は午前5時10分から6時45分へと前倒しされました。翌2002年4月1日からはさらに開始時刻が早まり、午前5時00分から6時45分までの放送となりました。そして、その半年後の2002年10月4日をもって、番組はその歴史に幕を下ろしました。

平日の放送に加えて、1993年10月9日から2000年3月までの期間、毎週土曜日の午前6時00分から8時00分にも放送されていました。土曜日版は「おはようMBS 川村龍一のゴールデン・エイジ」として始まり、後に「おはよう川村龍一です MBSゴールデン・エイジ」と改称されました。平日版とは番組構成が大きく異なり、戦時歌謡の紹介やゲストを招いた特集コーナーなど、じっくりと時間をかけた企画が特徴でした。

番組を彩る音楽も印象的でした。オープニングとエンディングのテーマ曲には、ザ・ビートルズの「フロム・ミー・トゥ・ユー」が使われました。この曲は番組中に流れるジングルとしてもアレンジされて使用されたほか、ジョニ・ミッチェルの「青春の光と影（Both Sides, Now）」などをアレンジした楽曲も、様々なコーナーのジングルとして用いられました。

主な出演者

番組を支えた主な出演者は以下の通りです。

川村龍一: 番組のメインパーソナリティとして、長きにわたり朝の声を務めました。
豊島美雪: 1985年10月から番組終了まで、月曜日から水曜日、そして土曜日版のアシスタントを担当しました。番組終了後もMBSラジオで早朝番組のパーソナリティとして活躍を続けています。
古沢久美子: 1985年10月から1987年6月まで、木曜日・金曜日担当のアシスタントでした。
桜井一枝: 1987年7月から番組終了まで、木曜日・金曜日担当のアシスタントを務めました。番組終了後も「ありがとう浜村淳です」などでアシスタントを務めています。
八木亜夫: 毎日新聞大阪本社の解説委員を務めながら、情報コーナーを担当し、土曜日版のパーソナリティも兼任しました。
その他にも、料理研究家の川畑廣昭氏や、金融・経済ジャーナリストの田嶋智太郎氏、元プロ野球選手の大熊忠義氏らが電話出演するコーナーがありました。「おはようMBS」時代には、フリーアナウンサーの森口かすみ氏や現役の女子大生が日替わりでアシスタントを務めていました。

主なコーナー

様々な企画が放送されましたが、中でも特徴的だったコーナーをいくつか紹介します。

FAXピックアップニュース: 川村氏自身がニュース原稿を紹介し、自身のコメントや見解を加えて伝える形式でした。
ミューニング: 「モーニング」と「ミュージック」を組み合わせた造語で、川村氏が選曲した楽曲を紹介するコーナー。
アメカルチョ: リスナーが翌週の天気予報（晴れか雨）を予想して応募する企画。的中者には雨傘（アメカルチョアンブレラ）などが贈られ、5日間全て当てた応募者の中から抽選で現金3万円が当たる人気企画でした。
トラ勝ち金: 番組の名物コーナー。前日の阪神タイガースの試合結果に応じて、虎（勝利）または猫（敗北）の鳴き声が流れ、勝敗でプレゼントが変わりました。阪神が勝利した場合は、活躍した選手の背番号合計値に円-米ドル相場の最大値を乗じた金額（後に得点による加算も）と、阪神タイガースロゴ入り印鑑「太鼓判」が抽選で贈られました。敗北の場合は「ネコニャン時計」が当たりました。阪神の連敗で猫ニャン時計の在庫が減ると、近鉄バファローズの勝利でも「ウシ勝ち金」として賞金が出る時期もありました。プロ野球オフシーズンはプレゼントなしでストーブリーグ情報が中心でした。
夜討ち朝駆け ホットな情報～毎日ニュース～: 7時の時報明けに放送されたMBS独自のニュースコーナー。毎日新聞大阪本社の協力を得て、八木亜夫氏が解説を加えて最新ニュースを伝えました。企画ネット形式で、スポンサーCMのみNRNネット受けでした。
TEL日くもる日: 様々な分野の専門家に電話でインタビューし、多様な話題について掘り下げるコーナー。リスナーからのメッセージも紹介されました。
私の旅: リスナーの叶えたい旅行プランを募集し、選ばれたプランを実際に実現するという夢のある企画。応募者には記念品が贈られ、月間賞受賞者は実際に旅がプレゼントされました。
歌のない歌謡曲: CBCラジオ制作の同名企画ネット番組を、一時的に番組内に内包する形で放送しました。

阪神・淡路大震災発災当日の対応

1995年1月17日（火曜日）、午前5時46分に阪神・淡路大震災が発生した際の対応は、この番組の歴史の中でも特筆すべき出来事です。発災当時、MBSラジオはJRNネット番組を放送していましたが、地震発生を受けて地震関連のニュースを挿入する対応を取りました。当番組は午前6時30分から通常通り放送開始予定でしたが、被災地（兵庫県芦屋市）の自宅にいた川村氏がスタジオに到着できていませんでした。

番組前半はアシスタントの豊島美雪氏が一人で進行する中、川村氏は自宅からMBSスタジオへ向かうタクシーの車内から、携帯電話を使って沿道の被害状況をリポートしました。何度も通話が途切れる状況にも関わらず、スタジオに到着する午前7時8分までこのリポートを続けました。この時、川村氏が発した「阪神高速は落ちました」という言葉は、震災の甚大な被害を早期に伝えるものとして、現在でもしばしば引用されています。

この日、番組は通常のコーナーを全て休止して、震災関連情報を中心に伝えました。また、この番組中に事前に指定されていた2本のCMが放送されたのを最後に、MBSラジオは全てのCM放送を取りやめ、報道特別番組へと移行しました。この震災発生時の経験は、MBSが早朝時間帯の自社制作体制を強化する契機の一つとなりました。

その他

番組終了間際には、「歌のない歌謡曲」の終了後、後番組である「ありがとう浜村淳です」の出演者との短いクロストークが行われることが恒例でした。

メインパーソナリティを務めた川村龍一氏は、「おはよう川村龍一です」終了後もMBSラジオの深夜番組などに出演を続けました。そして、2009年1月から2011年3月までは早朝番組「川村龍一のゆ〜ゆ〜ラジオ」のパーソナリティを担当しました。同番組への出演が最後となり、2012年5月25日に69歳で急逝されました。後日行われた「お別れの会」では、阪神・淡路大震災当日の臨場感あふれるリポートの音声が流されたといいます。この番組は、川村氏の声とともに多くのリスナーの記憶に残る存在です。

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