お前だって論法

お前だって論法（Tu quoque）

お前だって論法とは、論理学における誤謬の一種であり、一方が主張した意見を相手がその同じ意見に反する行動をしていることを指摘することで否定しようとする手法です。この言葉は、ラテン語で「お前も」という意味のフレーズに由来し、日本語では「そっちこそどうなんだ」という形で表現されます。また、これとは別に「偽善の抗弁」などと呼ばれることもあります。

論法の特徴

この論法には特定のパターンが存在します。まず、ある人物（A）が特定の主張（ここではXとします）を展開します。次に、別の人物（B）はAの過去の行動や言動を提示し、その行動がXに一致していないと主張します。Bはその結果として、Aの主張Xは間違いであると結論付けます。これは以下のような形で展開されることが多いです。

• - 例：ピーターが「ビルは税金を逃れている」と言った場合、ビルは「お前は20件の未払駐車料金があるじゃないか」と返すといった具合です。

このように、BはAを論理的に否定するのではなく、主にAの過去の行動に焦点を当て、Aが主張する権利を否定しようとします。そのため、このやり取りは論理の整合性を欠いた形になります。

誤謬としての地位

お前だって論法は、人身攻撃の一形態でもあり、議論の中で感情をあおることがよくあります。相手の道徳的な性格や行動を持ち出すことにより、その相手の信頼性を損なわせ、結果的にその主張を否定しようとするものです。この手法は、スモークスクリーム（煙幕）を使った戦術に類似しており、議論の核心から逸らすこともあります。

用例と歴史的背景

この論法は、過去の重要な事例においても見受けられます。たとえば、ナチス戦犯クラウス・バルビーの裁判では、弁護士ジャック・ヴェルジェスがこの手法を用いて、他国の戦犯の行動を持ち出すことで自らの主張を正当化しようとしました。しかし、法廷ではその論点は認められず、バルビーは有罪となりました。また、ニュルンベルク裁判でも、ナチス高官ヘルマン・ゲーリングが同様の論法を使ったことで、検事団の矛盾を突く場面がありました。

結論

お前だって論法は、議論の場において非常に見られる誤謬の一つであり、相手を攻撃することでその論理を覆そうとする非論理的な手法です。この手法は、感情的な反応を引き起こす傾向があり、時には議論を壊壊する結果となることも少なくありません。論点に集中し、理性的な対話を維持することが重要です。

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