お声掛かりの柏

「お声掛かりの柏」は、かつて札幌市中央区山鼻地区に存在したカシワの古木です。1976年に枯死しましたが、現在はその脇から生えた二世が同じ場所に保存され、その歴史を今に伝えています。

明治天皇との出会い

1881年9月1日、明治天皇は東北・北海道巡幸の際、山鼻屯田兵村を訪れました。屯田兵による開拓事業を視察するためです。天皇が山鼻学校で休憩した際、学校前にあったカシワの古木の立派さに目を留め、その木の名を尋ねたと伝えられています。このエピソードから、この古木は住民たちから「お声掛かりの柏」と呼ばれるようになり、地域のシンボルとして大切にされるようになりました。

皇太子嘉仁親王の訪問

1911年8月、皇太子嘉仁親王（後の大正天皇）が札幌を訪問した際、「お声掛かりの柏」の視察を希望されました。この訪問のため、中島遊園地から「お声掛かりの柏」のある山鼻公園への道路（南14条通）が拡幅・整備され、「行啓道路」または「行啓通」と呼ばれるようになりました。この道路は、現在もその名残をとどめています。

地域への影響

「お声掛かりの柏」は、地域の象徴として様々な場所にその名を残しています。札幌市立柏中学校の校名や校章、札幌市立幌南小学校の校章、山鼻かしわ児童会館など、公共施設や商店の名前にも使用されています。これは、地域住民がこの木をいかに大切に思っていたかの証と言えるでしょう。

枯死と二世の誕生

1976年、「お声掛かりの柏」は枯死が確認され、倒壊の危険があったため、同年10月15日に切り倒されました。推定樹齢は230年、樹高は18m、幹の直径は60cmという巨木でした。現在、切り株は札幌市立山鼻小学校に保存されており、また二世の若木が山鼻公園内に存在し、往時の面影を偲ぶことができます。

現在の場所とアクセス

「お声掛かりの柏（二世）」は、札幌市中央区南14条西10丁目の山鼻公園内にあります。

交通機関
* 札幌市営地下鉄東西線西11丁目駅からじょうてつバス「南14条西11丁目」下車

「お声掛かりの柏」は、明治天皇との出会いから、地域のシンボルとしての役割、そして枯死と二世の誕生を経て、今もなお山鼻の地に生き続けています。その歴史は、札幌の開拓の歴史とともに、地域住民の心に深く刻まれています。

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