お嫁サンバ

「お嫁サンバ」：郷ひろみの代表曲誕生秘話とその後

1981年5月1日、郷ひろみ38枚目のシングル「お嫁サンバ」がCBS・ソニーより発売されました。この曲は、単なるヒット曲という枠を超え、郷ひろみ自身のキャリア、そして日本の音楽シーンにおいて重要な意味を持つ楽曲と言えるでしょう。

プロデュースとテーマ

プロデューサー酒井政利氏によれば、「お嫁サンバ」のテーマは、結婚を控えた魅力的な女性への賛辞だとされています。タイトルに「サンバ」と冠されていますが、楽曲のジャンルがサンバであることを必ずしも意味するわけではありません。当時の日本の歌謡曲では、ラテン音楽全般を広く「サンバ」と呼ぶ傾向があり、郷ひろみ自身も楽曲発表当時、そのサウンドがサンバではないことに気づいていたと語っています。

発売までの葛藤

「お嫁サンバ」が制作された当時、郷ひろみは松田聖子氏との交際騒動の渦中にありました。この騒動の影響もあり、当初郷は遊び心のあるこの楽曲を快く思っておらず、歌唱を拒否したと言われています。特に歌詞の「123バ 223バ」という部分に意味を見出せず、戸惑いを隠せなかったようです。しかし、酒井氏からの熱心な説得、「この曲を明るく歌えるのはあなたしかいない。この歌は間違いなく後世に歌い継がれていくから」という言葉に心を動かされ、最終的にリリースに踏み切りました。

キャリアにおける転換点

30代に突入した郷ひろみは、アーティスト路線への転換を模索する中で、「123バ 223バ」のような軽快な楽曲は不要と考え、歌唱頻度を減らしました。しかし、ヒット曲に恵まれない時期を経て、郷は自身の音楽性を見つめ直し、「僕には123バ 223バしかないんだ」と悟り、「GOLDFINGER '99」の大ヒットへと繋がります。「お嫁サンバ」で培われたエンターテイナーとしての経験が、「GOLDFINGER '99」の歌詞にある「アーチッチー」といった表現にも繋がっていると郷自身も回想しており、この楽曲は彼のキャリアにおける重要なターニングポイントとなったと言えるでしょう。

バラエティ番組での活用

2000年代には、フジテレビのバラエティ番組『笑っていいとも!』の「身内自慢コンテスト」のジングルとして、「お嫁サンバ」の歌い出し部分が使用されていました。このコーナーは当初、「有名人にそっくりな恋人」を紹介するという趣旨で始まったため、この楽曲が選ばれたと考えられます。

音楽配信と歌詞変更

2007年には、陣内智則氏と藤原紀香氏の結婚披露宴で陣内氏が「お嫁サンバ」を歌唱した際、「恋する紀香はきれいさ」と歌詞を変更して歌ったことがきっかけで、女性の名前を歌詞の冒頭に挿入したバージョンを100種類用意し、音楽配信限定で発売されました。これは、多くの問い合わせを受け、郷ひろみ自身も「喜んでもらえるなら、より多くの人に歌ってあげたい」と快諾した結果です。

振付とダンサー

「お嫁サンバ」の振付は西条満氏が担当しました。サビの部分ではボックスステップを踏みながら手をヒラヒラさせる特徴的な振り付けが印象的です。また、歌番組などのステージでは、専属の4人組女性ダンサー「ヒロミックレディーズ」がバックダンサーとして華を添えていました。

収録楽曲とカバー

シングルには表題曲「お嫁サンバ」の他に「シンメトリー・ラブ」が収録されています。作詞は三浦徳子氏、作曲は小杉保夫氏、編曲は船山基紀氏が担当しました。「お嫁サンバ」はその後、斎藤清六氏、台湾の歌手比莉（王雪娥）、韓国のデュオCANなど、様々なアーティストによってカバーされています。

「お嫁サンバ」は、楽曲そのものの魅力だけでなく、郷ひろみのキャリア、そして日本の音楽シーンにおける様々な出来事と深く関わっている、まさに時代を彩る名曲と言えるでしょう。

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