お手玉 (松本清張)

お手玉

松本清張の短編小説『お手玉』は、1978年に『小説新潮』に掲載され、1979年に短編集『隠花の飾り』として刊行されました。1986年にはテレビドラマ化もされ、多くの人に愛される作品となりました。

あらすじ

物語は、東北地方の温泉地を舞台に、料理屋を営む角野とみ子とその家族に焦点を当てています。とみ子は、温泉地の賑わいを生かして料理屋の経営に精を出していますが、その背後には複雑な家庭の事情が絡んでいます。彼女の夫である栄治は心臓病を患っており、その病状は改善の見込みがありません。そんな中、料理人として田原安雄が新たに雇われます。

安雄は、九つ年下の若い男性で、とみ子にとっては新しい風をもたらす存在となります。しかし、栄治が病床を離れ、最終的には自宅階段から転落して命を落としてしまいます。この出来事は、料理屋の運営だけでなく、人間関係を一層複雑にしていきます。とみ子は若い安雄と親密な関係に発展し、安雄は家庭を顧みずに彼女のもとに通うようになります。彼の妻はその状況に感情を抱えながらも、何もできずにいるという、彼女の弱さが浮き彫りになります。

更に、とみ子は信用金庫の理事長をスポンサーに引き入れ、その関係がより親密化します。この二人は一緒に二階で過ごす時間が増えていく中、その状況を安雄は耐えがたいものとして捉えるようになります。安雄の内心の苦悶は、周囲の人々にも明らかになるほどに深刻です。彼は愛する人を失う不安、そして自身の無力感に苛まれることになります。

クライマックス

物語は、ある朝、安雄が料理屋の裏の小屋で遺体となって発見されることで、陰惨なクライマックスを迎えます。この死は、誰にとっても衝撃的であり、複雑な人間関係が生んだ悲劇であることが明確になります。

テレビドラマ化

この短編は、1986年に関西テレビ制作・フジテレビ系列で放映され、視聴率は10.0％という高評価を得ました。ドラマ版では、野川由美子や高橋幸治をはじめとする実力派のキャストが揃い、作品の持つ緊張感と人間ドラマを見事に表現しています。

まとめ

『お手玉』は、禁断の愛とその結果引き起こされる悲劇を描くことで、視聴者に深い感情を呼び起こします。松本清張の持つ独特な視点が光るこの作品は、今なお多くの読者や視聴者に感銘を与えるものとなっています。

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