お早よう

映画『お早よう』

1959年に公開された『お早よう』は、日本の映画界の巨匠、小津安二郎監督の記念すべき第50作となる作品です。この映画は、郊外の新興住宅地を舞台に、元気な子供たちとその周囲の大人たちの生活をコメディタッチで描いています。特に、子供の自由で無邪気な遊びに対して大人たちが振り回される様子がユーモラスに表現されています。

背景と制作

『お早よう』の制作に至るまで、小津監督は多くの評価を得ていました。1958年10月には『東京物語』がロンドン映画祭でサザーランド賞を受賞し、11月には紫綬褒章も受章。このように名実ともに映画界の重鎮として認識されるようになった時期に、小津は本作を選びました。

本作の制作は1959年の1月から始まりました。ロケハンの後、2月27日から4月19日までの約2ヶ月間にわたって撮影が行われ、5月12日に公開されました。小津作品としては『彼岸花』に次ぐ2本目のカラー映画であり、その色彩感覚には小津ならではの遊び心が随所に感じられます。

あらすじ

物語は、多摩川沿いにある一戸建て住宅が立ち並ぶ新興住宅地から始まります。子供たちは大相撲に夢中で、テレビを持たない自宅を離れ、近所の丸山夫妻の家に集まって視聴しています。彼らはまた、授業の合間におならをする遊びにも熱心で、時には失敗してしまうこともあります。

一方、母親たちは町内会費を巡るトラブルや押し売りの騒動に振り回され、噂話に興じる日々を送っています。そんな中、林家の息子・実と勇は、テレビが欲しいと両親に頼みますが、聞き入れてもらえず、逆に叱られてしまいます。

このことから、兄弟は家でも学校でも口を利かないことに決めますが、それが原因で様々な問題が発生します。学校では教師に話しかけられても何も答えられず、家では大切な給食費の話もできなくなってしまいます。心配した教師は家庭訪問をすることになり、兄弟は恐れて逃げ出します。やがて友人の手を借りて家に戻った彼らを待っていたのは、父親が購入したテレビの箱でした。

スタッフとキャスト

この作品の監督は小津安二郎で、脚本には野田高梧と小津自身が名を連ねています。映像や美術、音楽など、品質を支える多くのスタッフもおり、作品全体のクオリティを高める役割を果たしています。

キャストには、失業中の青年を演じる佐田啓二、会社勤めをする若い女性の久我美子、母親役の三宅邦子、そして定年を控えた笠智衆など、多彩な顔ぶれが揃っており、彼らの演技が映画に温かみを与えています。

まとめ

『お早よう』は、単なるコメディーにとどまらず、日常の小さな出来事を通して人間関係やコミュニティの重要性を再認識させてくれます。小津安二郎監督の独自の視点で描かれたこの作品は、観る者にほんのりとした感動を与え続けています。

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