かき船

かき船（かきふね）

かき船は、広島を中心に展開される独特な飲食店形態であり、主に河川に浮かぶ和船から新鮮な牡蠣料理を提供しています。牡蠣の豊富な産地である広島の魅力を体験できる場所として、多くの観光客や地元住民に愛されてきました。

起源と歴史

かき船の起源は1660年代、安芸国の草津から大阪にかけての小西屋五郎八という業者による出発に遡ります。当時、草津や仁保、矢野などの港から晩秋に生牡蠣を収穫し、それを大阪で販売していました。毎年1月から2月頃には広島に帰港し、地元の人々に新鮮な牡蠣を届けるというサイクルが確立されていました。

1707年、大坂での火災をきっかけに、草津の業者は事業活動の特権を与えられ、これにより地域の業者が独占的にかき船を運営するようになりました。1810年代には、船内で牡蠣料理が提供され始め、1832年のメニューには、カキ飯や土手鍋、酢ガキなど多彩な料理が記録されています。

明治時代以降、草津の業者に加え、矢野や海田からも多くの業者が参入し、かき船の数は急増。1882年には77隻、昭和初期には150隻以上が営業していました。これらの船は、通常10人前後の従業員によって運営されており、明治時代からはカキフライなど新しい料理も登場しました。地域の特産品として、広島菜漬も併せて楽しむことができました。

第二次世界大戦前には、広島市内の元安川や本川でもかき船が営業していました。また、東京にもかき船が進出し、広島の食材のみを使用する形で展開されました。1920年代以降、輸送手段は汽船や汽車へと進化し、効率的な牡蠣の流通が実現されました。

しかし、戦後は陸上に店舗を構える飲食店へと転換し、かき船の数は急激に減少しました。2021年時点では、広島市元安川に1隻（かなわ）、呉市堺川に1隻（味の居酒屋かき船）、大阪市旧淀川に1隻（かき広）、松本市松本城の堀に1隻（かき船）が見られます。

現在のかき船と課題

かき船は、時代の流れと共に変化してきましたが、依然としてそれぞれの地域において重要な観光資源とされています。しかし、2013年には国土交通省からの指示により、広島市のかき船の河川使用許可が問題となりました。営利目的ではなく観光資源としての価値は認識されていますが、自然災害への対応が求められました。その中で、移転計画が進められ、各所から意見が寄せられています。このような問題を経て、かき船が今後も地域の文化として残り続けることが期待されます。「かなわ」や「ひろしま」など、根強い人気があるかき船は、地域の食文化や観光業において重要な存在であり続けるでしょう。

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