かたあしだちょうのエルフ

『かたあしだちょうのエルフ』は、小野木学氏によって作・絵が手がけられた感動的な絵本です。ポプラ社から1970年10月に初版が刊行され（ISBN 9784591005361）、翌1971年度には青少年読書感想文全国コンクールの課題図書として多くの読者に親しまれました。

作者はあとがきの中で、広大なアフリカの草原に力強く立つバオバブの木の写真から深いインスピレーションを得て、この物語の構想を練ったと明かしています。

物語の舞台は、雄大なアフリカのサバンナ。そこに暮らすダチョウのエルフは、その力強さと共に優しい心を持ち合わせていました。彼は草原の動物たち、特に多くの子どもたちから深く慕われていました。エルフ自身もまた子どもたちを心から愛しており、彼らを背中に乗せて風を切って走る時間を何よりも大きな喜びとしていました。

しかし、ある日、平穏な日々は突然破られます。どう猛なライオンが子どもたちを襲撃したのです。エルフは愛する子どもたちを救うため、迷うことなくライオンに立ち向かいました。激しい格闘の末、エルフは見事にライオンを撃退し、子どもたちを危機から救い出しました。ですが、この勇敢な戦いの代償はあまりにも大きく、エルフはライオンによって片方の脚を無惨にも食いちぎられてしまったのです。

片脚を失い、かつてのように草原を自由に駆け巡ることができなくなったエルフを、仲間たちは当初深く案じ、食物を運んで助けようとしました。しかし、残酷にも時が経過するにつれ、仲間たちの姿は次第にまばらになり、かつてあれほど慕ってくれた子どもたちからも忘れ去られていきます。孤独と絶望の中で、エルフの心身は衰弱の一途をたどりました。

そうして日々を過ごしていたある日、再び子どもたちが危険にさらされます。今度は黒豹が現れ、子どもたちに襲いかかったのです。愛する子どもたちを守り抜こうと、エルフは最後の力を振り絞り立ち上がります。彼は逃げ遅れた一匹の子どもを背に乗せ、再び黒豹と対峙し、勇敢に戦いました。エルフの壮絶な応戦により、ついに黒豹は退散していきました。

子どもたちは助けてくれたエルフに感謝を伝えようと振り返りました。しかし、そこにエルフの姿はもうありませんでした。代わりにその場所には、まるで片脚で大地に立ち続けたエルフがそのままの姿で存在しているかのような、一本の威厳ある木が立っていました。そして、その木の根元からは、清らかで澄んだ泉がこんこんと湧き出していたのです。それは、子どもたちを案じ、最後まで彼らの幸福を願ったエルフの涙が結晶したかのようでした。

エルフは、一本の脚で大地に立ち続けたまま、やがて木へと姿を変えました。彼は今もその場所から、永遠に子どもたちを見守り続けています。草原の動物たちは、その威厳ある一本の木の姿を目にするたび、勇敢で優しいエルフのことをいつまでも深く思い出すのです。

この物語は、自己犠牲を厭わない深い愛情、時間の経過による変化、そして失われたものが形を変えて永続するという生命の循環や存在のあり方について、静かに問いかけてくる作品と言えるでしょう。

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