きしろ

株式会社きしろ

株式会社きしろ（かぶしきがいしゃ きしろ）は、兵庫県明石市に本社を構える、一世紀を超える歴史を持つ製造企業です。1915年（大正4年）に船舶用エンジンの製造事業者として事業を開始しました。以来、その技術基盤を拡充し、現在ではエネルギー産業、航空機産業など、多岐にわたる分野へも事業を展開しています。

事業内容

同社は、船舶用エンジンおよびその周辺部品の製造において、国内外から高い評価を得ています。特に、船舶用クランクシャフトの部品製造では、世界市場において約40パーセントのシェアを占める実績があります。このほか、推進軸、中間軸、連接棒、ピストン棒といった重要な部品群の製造も手掛けており、船舶の推進システムを支える基幹部品供給メーカーとしての地位を確立しています。

製造活動は主に兵庫県内の複数の工場で行われています。加古郡播磨町にある播磨工場、加古川市の土山工場、高砂市の高砂工場などが主要な生産拠点です。これらの工場では、船舶、火力・原子力発電、航空宇宙、一般産業機械向けなど、非常に幅広い用途で使用される超大型の鋳鍛鋼品から比較的小型の部品に至るまで、精密な機械加工を行っています。また、合金チタンや高合金、高強度ステンレス鋼といった加工が難しいとされる特殊な素材（難削材）の機械加工においても、高度な技術と豊富な経験を有することを強みとしています。

同社の主要な製品カテゴリは以下の通りです。

船舶関連: クランクシャフト、推進軸、中間軸、連接棒、ピストン棒、シリンダーフレームなど
航空機関連: ジェットエンジン部品、機体・翼構造部品、降着装置（ランディングギア）部品など
エネルギー関連: 排気車室、タービンケーシング、キャスク、シェル、ローターなど
産業機械関連: キルンタイヤ、プレス用エキセン軸、破砕機部品など
製鉄設備: カップリング、スピンドルシャフト、バックアップロールなど
インフラ関連: シールド堀進機部品、ケーブルバンドなど

これらの多様な製品は、同社が培ってきた精密加工技術と、様々な素材に対応できる柔軟性によって生み出されています。

沿革

株式会社きしろの歴史は、1915年（大正4年）に明石の地で船舶用発動機関の製造を目的とした個人事業として始まりました。1926年（大正15年）には株式会社へと組織を改めました。戦時中の1944年（昭和19年）には、海軍の指導により一時的に鐘淵紡績株式会社へ統合されましたが、終戦後の1945年（昭和20年）に「きしろ発動機株式会社」として再び独立を果たします。1953年（昭和28年）には、事業の主軸を鋳鍛鋼品の切削加工へと転換しました。1955年（昭和30年）には樹脂部門を発足させ、射出成形事業にも進出。この樹脂部門は1960年（昭和35年）に明石化成工業株式会社として独立しました。事業拡大に伴い、1968年（昭和43年）に土山工場、1973年（昭和48年）には播磨工場をそれぞれ完成させました。また、1973年（昭和48年）には営業部門がきしろ商事株式会社として分離独立しています。1991年（平成3年）には現在の社名である「株式会社きしろ」に変更し、2004年（平成16年）に本社を現在の明石市天文町に移転しました。近年では、2009年（平成21年）にきしろテクノロジー株式会社を設立して技術開発体制を強化し、2010年（平成22年）に高砂工場、2015年（平成27年）に播磨精機工場を新設するなど、生産能力の増強を進めています。品質管理体制も強化しており、2014年（平成26年）には航空宇宙関連の品質マネジメント規格であるJIS Q 9100の認証を取得しています。その技術力と事業展開が評価され、2017年（平成29年）には経済産業省より地域未来牽引企業に選定されました。

グループ企業

主要なグループ会社として、プラスチック成形品の製造を手掛ける明石化成工業株式会社、販売・商事部門を担うきしろ商事株式会社、技術開発・研究部門を担うきしろテクノロジー株式会社などがあります。このほか、ナイスグリーンという関連会社も存在します。

その他の活動

同社は地域社会への貢献活動も行っています。兵庫県立明石公園陸上競技場のネーミングライツを取得し、「兵庫県立きしろスタジアム」と命名するなど、スポーツ振興や地域施設の支援を行っています。また、環境問題への取り組みとして、明石市内の敷地を活用したメガソーラー発電事業にも参画しています。かつては、日本将棋連盟関西本部主催の女流棋戦「きしろ杯争奪関西女流メイショウ戦」に協賛していました。さらに、旧呉海軍工廠で戦艦大和の主砲身製造に使用された歴史的な大型旋盤を所有しており、これを大和ミュージアム（呉市海事歴史科学館）へ寄贈するなど、産業遺産の保存にも貢献しています。

株式会社きしろは、長年にわたり培ってきた高度な機械加工技術を基盤に、船舶から航空機、エネルギー、インフラまで幅広い分野で社会を支える製品を提供し続けています。

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