きずな (人工衛星)

超高速インターネット衛星『きずな』の概要

『きずな』（WINDS）は、宇宙航空研究開発機構（JAXA）と情報通信研究機構（NICT）が共同開発した、革新的な超高速インターネット衛星です。この衛星は、NEC東芝スペースシステムが開発・製造を担当し、2008年2月23日に種子島宇宙センターからH-IIAロケットによって打ち上げられました。

目的と背景

『きずな』の開発は、2001年に日本政府が提唱した「e-Japan重点計画」に基づいています。この計画は、広範囲にわたる無線通信ネットワークを構築し、超高速で固定用国際ネットワークを実現するための技術を実証することを目的としています。また、JAXAの「i-Space」構想の一環としても位置づけられています。『きずな』は特に、高速インターネットが未整備な地域や、災害時に地上通信が途絶えた際の重要な通信手段として機能し、地域間の情報格差を減少させる役割を果たします。

通信速度

一般家庭用の通信速度は、直径45cmのアンテナを使用した場合、下りは約155Mbps、上りは1.5Mbpsから6Mbpsです。企業用の大規模な地上局を設置すると、最大1.2Gbpsの通信が可能となります。2010年には、1.1GHz帯域幅を利用し、1.2Gbpsの単一搬送波による伝送速度を実現。2014年には、16波の16APSK多値変調信号において、世界最高速の3.2Gbpsを達成しました。

商用サービス化の計画

『きずな』は主に技術実証のための衛星であり、本格的な商用サービスには向いていません。日本国内を複数のビームでカバーするマルチビームアンテナ（MBA）を搭載していますが、スイッチング能力に制限があり、イントラネットサービスは同一ビーム内に制限されています。商用サービスのために、別の衛星が打ち上げられる予定がありましたが、期限は過ぎました。

2003年には、超高速衛星インターネットサービス事業を推進するために、NEC、NEC東芝、JSATの共同出資による会社が設立されました。しかし、最終的な商用化には至っていません。

搭載機器

『きずな』には、複数の先進的な通信機器が搭載されています。たとえば、マルチビームアンテナ（MBA）は日本本土とアジアの主要都市との通信が行え、雨天でも安定した通信が可能です。また、アクティブ・フェーズドアレイ・アンテナ（APAA）はアジア太平洋地域全体をカバーし、より広範な通信を可能にします。さらに、高速スイッチングルータ（ABS）は155Mbpsの通信能力を持ち、効率的な通信を実現しています。

スケジュールと経緯

『きずな』の打ち上げは、当初2008年2月15日に予定されていましたが、ロケットの要素で一度延期がありました。その後、無事に打ち上げに成功し、機能確認や各種実験が行われました。特に、通信試験は高い成功率を記録し、多くの機能が正常に動作することが確認されました。2019年には運用が終了しましたが、これまでの成果は、将来の通信技術への影響を与えるでしょう。

問題と対策

『きずな』の運用の過程でいくつかの問題も発生しました。たとえば、不正アクセス事件やコンデンサの逆実装問題などは、技術者たちにとって大きな教訓となりました。これらの問題を解決するための対策が講じられ、将来の設計や製造工程に生かされることが期待されています。

結論

『きずな』は、日本の通信技術の発展に多大な貢献をした衛星であり、その実績は世界的にも評価されています。今後もその技術は、新しい通信基盤の確立に向けて利用されていくでしょう。

もう一度検索