きっと忘れない (映画)

『きっと忘れない』（原題：With Honors）は、1994年に公開されたアメリカ合衆国の青春ヒューマンドラマ映画です。上映時間は1時間41分。

舞台は名門ハーバード大学。主人公は、将来を嘱望される優等生モンティ・ケスラー。彼は政治学を専攻し、卒業論文を執筆中でした。論文は着々と進み、教授からも高い評価を得ていました。

ある日、モンティは完成間近の卒業論文原稿を大学の地下ボイラー室に落としてしまいます。その原稿を拾ったのは、ボイラー室を住処としていたホームレスのサイモン・ワイルダーでした。

サイモンは、最初は原稿を燃やそうとしますが、慌てて駆けつけたモンティとの間で騒動が勃発。この偶然の出会いから、モンティと彼のルームメイトたちは、サイモンと奇妙で、しかし心温まる交流を深めていくことになります。

サイモンを演じるのは、『ホーム・アローン』シリーズでお馴染みのジョー・ペシ。彼は、一見粗野で頑固なホームレスを演じながら、時折見せる機知に富んだユーモアや、意外なほどの読書好きという一面、そして過去への深いノスタルジアを繊細に表現しています。サイモンは、かつては船員として働いていましたが、解雇されホームレスになってしまったという過去を持っています。彼は、過去の思い出の場所に拾った小石を大切に持ち歩いており、その石には彼の複雑な心情が投影されています。

モンティは、サイモンと接する中で、自分自身の価値観や将来への展望を見つめ直す機会を得ます。サイモンの自由奔放な生き方、そして彼の人生経験は、優等生として順風満帆な人生を送ってきたモンティにとって、大きな衝撃であり、同時に貴重な学びとなります。

モンティのルームメイトたちも、サイモンとの交流を通して、それぞれが成長していく過程が描かれています。明るい性格のエヴァレット、優しいコートニー、子供っぽいジェフ。彼らは、最初はサイモンに対して戸惑いを隠せないものの、次第に彼の人間味に触れ、友情を育んでいきます。

モンティの卒業論文指導教授であるピッカナン教授は、学会で名を知られた権威ある人物です。彼はモンティの論文の才能を見抜き、将来への期待を寄せていました。しかし、サイモンとの出会いをきっかけに、モンティは論文の完成に苦悩するようになります。

『きっと忘れない』は、一見異なる境遇の人々が織りなす、人間ドラマです。ハーバードというエリートな環境と、ホームレスという社会の底辺にいる人物との出会いが、それぞれの登場人物の人生にどのような影響を与えるのか。この映画は、友情、人生の選択、そして社会との繋がりといった普遍的なテーマを、ユーモアと感動を交えて描き出しています。

監督はアレック・ケシシアン。製作総指揮にはジョン・ピーターズとピーター・グーバー、製作にはポーラ・ワインスタインとエイミー・ロビンソンが名を連ねています。脚本はウィリアム・マストロシモーネが担当。撮影はスヴェン・ニクヴィスト、音楽はパトリック・レナードが手掛けています。主題歌はマドンナが歌う「アイル・リメンバー」です。

この映画は、社会の様々な階層の人々、そして彼らが抱える葛藤や喜びを描いた、深く考えさせられる作品です。一見異なる人生を送る人々が出会うことで生まれる、予想外の友情と成長の物語は、観る者の心に長く残る感動を与えてくれるでしょう。

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