くま川鉄道KT-500形気動車

KT-500形気動車について

KT-500形気動車は、くま川鉄道が保有する鉄道車両で、1989年から運行を開始しました。この車両は、老朽化したKT-200形を置き換えるために導入され、2014年に新潟トランシスによって製造されました。最初に登場したのはKT-501からKT-503の3両で、これらはKT-201とKT-202の後を継ぎました。さらに同年12月にはKT-504とKT-505の2両が加えられました。

KT-500形は、一般運行のほかに観光列車「田園シンフォニー」としても2020年3月まで運行されていました。この観光列車では、くま川沿いの美しい風景を楽しむことができます。車両のデザインには地元の特産品や芸術が反映されており、運転中に訪れる停車駅では地元の物産の販売も行われました。

車両の特徴

前面の左右には各2つの前照灯があり、LED式の行先表示器が貫通扉の上部に配置されています。さらに、前面下部には尾灯も取り付けられています。この車両は、先進的な運転支援機能を果たす列車情報制御装置TICSを装備し、運転台にはくま川鉄道で初めてワンハンドルマスコンが採用されています。内部では、地元で育てられたヒノキが使われた車内設備が特徴です。

当初は観光地に適したソファやテーブル付きのセミクロスシートが配置されていましたが、近年の通学需要の増加に伴い、2019年8月からはロングシート配置に変更されました。座席は、通学する学生のためにスペースを最適化された配置となっています。一部の車両には子供向けの展望席や特産品の展示棚もありますが、テーブルは撤去されました。各車両にはトイレが含まれており、車体の長さは18メートルです。

KT-500形は、インダストリアルデザイナー水戸岡鋭治によるデザインであり、四季をテーマにしてカラーリングや内装が施されています。具体的には、KT-501は「冬」をイメージした茶色、KT-502は「秋」を表す赤色、KT-503は「春」を示すベージュ色、KT-504は「夏」の青色、KT-505は「白秋」を象徴する白色です。このようにして、それぞれの車両は季節感を持たせるようにデザインされています。

観光列車「田園シンフォニー」

観光列車「田園シンフォニー」は、1日1往復の運行で、観光客に人気のルートです。特に人吉温泉を出発し湯前駅へ向かう下り列車は、絶景を楽しむために速度を落として運転されます。沿線の観光ポイントでは、観光案内や地元の物産の販売が行われ、乗客は地元の魅力を体験されます。それに加え、軽食や地域特産品の車内販売も実施されていました。下り列車には運賃とは別に座席指定料金（300円）が必要ですが、上り列車は全車自由席です。

「田園シンフォニー」の運行開始日は2014年3月8日であり、当初は土日祝日と一部平日のみの運行でしたが、2015年以降は毎日運行するようになりました。また、2015年には特別な5両編成の運行が行われ、春から冬をテーマにした車両が連結されました。2020年には、この観光列車としての運行が終了しました。

令和2年7月豪雨の影響

2020年7月に発生した令和2年7月豪雨では、くま川鉄道にも甚大な影響が及びました。人吉温泉駅の車庫に留置されていたKT-500形の全車両が浸水し、その後は運行が停止しました。しかし、2021年11月28日には部分的に運行が再開され、3両のKT-500形が運行を果たすことができました。

KT-500形気動車は、くま川鉄道の重要な存在であり、地域の交通手段としてだけでなく観光資源としても大いに貢献しています。

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