くるみ割り人形とねずみの王様

くるみ割り人形とねずみの王様

E.T.A.ホフマンによるメルヘン『くるみ割り人形とねずみの王様』は、1816年に発表され、後にチャイコフスキーのバレエ『くるみ割り人形』の原作として広く知られるようになりました。この物語は、クリスマスの夜に起こる不思議な出来事を通して、子供たちの夢と冒険心、そして愛の力を描いています。

物語の始まり

物語は、医務参事官シュタールバウム家のクリスマスから始まります。娘のマリーは、名付け親のドロッセルマイヤーおじさんから、不格好だけれど愛らしいくるみ割り人形をプレゼントされます。しかし、兄のフリッツが人形を壊してしまうと、マリーは人形を慰め、自分の人形のベッドで休ませようとします。その夜、マリーは不思議な夢を見ます。

ネズミの王様との戦い

夢の中で、7つの頭を持つネズミの王様が現れ、人形たちと戦争を始めます。くるみ割り人形は人形たちを率いて勇敢に戦いますが、窮地に陥ります。マリーはくるみ割り人形を助けようとして気を失ってしまいます。翌朝、マリーは自分のベッドで目覚めますが、夢で見た出来事が忘れられません。

ピルリパート姫の物語

ドロッセルマイヤーおじさんは、マリーに「ピルリパート姫」というおとぎ話を語ります。それは、ネズミの呪いで醜い姿に変えられた姫が、ドロッセルマイヤーの甥の活躍によって元の姿に戻るものの、代わりに甥が醜い姿になってしまうという物語でした。マリーは、くるみ割り人形こそがその青年ドロッセルマイヤーなのだと直感します。

人形の国への招待

その後、マリーはくるみ割り人形から、ネズミの王様を倒したお礼として、美しい人形の国へ招待されます。夢のような人形の国の情景に心奪われるマリー。しかし、翌朝目覚めると、家族は誰もマリーの話を信じません。

王子様の正体

そんな中、ドロッセルマイヤーおじさんが甥の青年を連れてやってきます。青年はマリーに、自分がマリーに救われたくるみ割り人形であり、人形の国の王様としてマリーを王妃に迎えに来たと告げます。

作品の背景

『くるみ割り人形とねずみの王様』は、人形が命を持つというファンタジー要素と、子供たちの成長や心の葛藤を描いた作品であり、児童文学に大きな影響を与えました。しかし発表当初は、当時の社会情勢から批判も多くありました。物語に描かれるような裕福な家庭の子供たちの暮らしは、すべての子どもに当てはまるものではなかったためです。

ホフマンはこの物語を、友人の子供たちのために即興で作ったと言われています。特にマリーという少女を可愛がっており、彼女の死を予感していたというエピソードも残されています。物語に登場するドロッセルマイヤーおじさんは、ホフマン自身の姿を投影しているとも言われています。

チャイコフスキーのバレエ『くるみ割り人形』は、この物語を元にしていますが、実際にはアレクサンドル・デュマ・ペールによる翻案版が下敷きにされています。バレエでは、物語が大幅に短縮され、主人公の名前も「クララ」に変更されています。

この物語は、バレエの他にも、映画やアニメーションなど、様々な形で翻案され、世界中の人々に愛されています。

もう一度検索