この世にたやすい仕事はない

『この世にたやすい仕事はない』

津村記久子による連作短編小説『この世にたやすい仕事はない』は、2015年10月に日本経済新聞出版社から刊行された作品です。本作は、2015年度芸術選奨新人賞の文学部門を受賞し、2017年4月にはNHKBSプレミアムにてテレビドラマ化されました。主人公の36歳の女性が、様々な職業を通じて自身の人生に向き合う様子を描いています。

あらすじ

物語の中心は、自身の仕事に疲れ果て実家に帰った「私」であり、そこから再度の職探しに挑むことになります。相談所で紹介された職業は、どれも一風変わったものばかりで、主人公の日常は様々な出来事を通じて色彩豊かに描かれます。

1. みはりのしごと

最初に紹介されたのは、目の前の建物に住む小説家・山本山江を見張る仕事です。チーフである染谷によれば、彼女が密輸品の証拠を収集するために見張る必要があるという。日常的な様子をモニター越しに観察しながら、主人公は次第に一人の作家の内面に触れることになります。

2. バスのアナウンスのしごと

次の職は、循環コミュニティバス「アホウドリ号」の広告アナウンスを行う役割です。しかし、上司は同僚の江里口を見張るように命じるなど、不思議な要望をします。コミュニティに寄り添いつつ、同僚との関係を築き上げていく様子が描かれます。

3. おかきの袋のしごと

その後、米菓製造業者にて新製品のおかきのパッケージに豆知識を書く仕事に就きます。新たな企画として「おだやかアドバイス」コーナーを提案し、人気コーナーの担当者になることで自分の存在感を高めていくものの、思わぬ波乱が待っています。

4. 路地を訪ねるしごと

その次に、官公庁からの依頼でポスターの張り替え作業に従事することになりますが、「さびしくない」という怪しい団体の存在を知っていくことになります。社会との接点を通じて主人公は次第に人間関係や社会問題に目を向けるようになります。

5. 大きな森の小屋での簡単なしごと

最後に紹介されたのは、森林公園の奥深くにある小屋での事務仕事です。周囲の栗の実が中身を抜かれているのを発見し、そこで暮らす正体不明の存在の影を感じ取ります。この不気味な環境での出来事は、主人公に更なる想像力を与えます。

テレビドラマ

2017年4月に放送された『この世にたやすい仕事はない』は、真野恵里菜を主演に迎えたドラマです。登場人物はオリジナルの名前を持ち、「私」は「霧中かすみ」として描かれ、物語はさまざまな職を通じた人生の模索を美しく映し出しています。

キャスト

主要キャストには、真野恵里菜のほか、塚本高史や浅野温子などが名を連ね、個々の役が多彩なお話を織り成します。ドラマの脚本は、土田英生やブラジリィー・アン・山田が手がけ、音楽は稲岡宏哉が担当し、質の高い作品に仕上げました。

この小説とテレビドラマは、単に職業の紹介にとどまらず、現代に生きる私たちの心の葛藤や成長、そして人との関わり合いを描き出す深いテーマ性を持っています。

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