この人を見よ (マンテーニャ)

アンドレア・マンテーニャ作「この人を見よ」

アンドレア・マンテーニャ（1431-1506）が1500年頃に描いたとされる『この人を見よ』（伊: Ecce Homo）は、キリストが受難の場面で民衆の前に晒される様子を描いた絵画です。現在、パリのジャックマール＝アンドレ美術館に所蔵されています。この作品は、マンテーニャの晩年の作風をよく表していると評価されています。

作品の背景

「Ecce Homo」という言葉は、新約聖書において、キリストが十字架にかけられる前に、ローマ総督ピラトが群衆にキリストを指して言った言葉に由来します。この言葉は、「見よ、この人だ」という意味を持ち、この場面は多くの画家によって描かれてきました。

マンテーニャの「この人を見よ」では、茨の冠を被り、首に縄をかけられたキリストの半身像が画面の大部分を占めています。キリストの左側には、偽ヘブライ語が書かれた帽子を被ったユダヤ高官が描かれ、右側には歯の抜けた老婆が配置されています。これらの人物の配置は、キリストの受難をより一層際立たせ、見る者に深い印象を与えます。画面上部には、トロンプ・ルイユ（だまし絵）の手法で、「CRVCIFGE EVM. TOLLE EVM. CRVCIFGE CRVC」（「こいつを十字架につけろ、連れて行け、十字架につけろ」）という群衆の罵声が書かれた紙片が描かれており、画面全体の緊迫感を高めています。

作品の来歴と評価

この作品のマンテーニャへの帰属と制作年代は、美術史家ロナルド・ライトボーンによって明らかにされました。1891年には、美術収集家のネリー・ジャックマールとエドゥアール・アンドレによって、ミラノの収集家ガンバッシーニから購入されました。彼らのコレクションは1912年にフランス学士院に遺贈され、この作品は現在、彼らの旧邸宅であるジャックマール＝アンドレ美術館に所蔵されています。

この作品は、マンテーニャの卓越した描写力と、キリストの受難というテーマを深く掘り下げた表現力が評価されています。また、トロンプ・ルイユの手法を用いた画面構成や、登場人物の配置など、細部に至るまで計算された構図は、見る者に強い印象を与え、ルネサンス美術の傑作の一つとして高く評価されています。

まとめ

アンドレア・マンテーニャの「この人を見よ」は、キリストの受難という宗教的なテーマを、卓越した画力と構図で表現した作品です。ジャックマール＝アンドレ美術館で、その歴史的、美術的価値を目の当たりにすることができます。この作品を通して、マンテーニャの芸術性と、ルネサンス美術の深さを感じることができるでしょう。

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