この愛のために撃て

概要

映画『この愛のために撃て』（原題：À bout portant）は、2010年にフランスで製作された、手に汗握るサスペンス・アクション作品です。愛する者を救うために、絶体絶命の状況に追い込まれた一人の男の奮闘を描き、スリリングな展開で観客を惹きつけます。

ストーリー

物語は、意識不明の重体となった見知らぬ男（ロシュディ・ゼム）が病院に搬送される場面から始まります。男は過去に何らかの事件に関与していると見られ、病院内で警察の厳重な監視下に置かれることになります。

時を同じくして、この病院で看護助手として働くサミュエル（ジル・ルルーシュ）は、出産を間近に控えた最愛の妻、ナディア（エレナ・アナヤ）が何者かに誘拐されるという事態に直面します。犯人からの要求は、サミュエルにとって過酷なものでした。それは、彼が勤務する病院にいる、警察の監視下にある意識不明の男を、あらゆる監視の目をかいくぐって外部へ連れ出すこと。妻の命と引き換えに、サミュエルは危険な取引に応じるしか道は残されていません。

一方、事件を追う殺人課の刑事、ファーブル（ミレーユ・ペリエ）は、搬送された男がサルテという前科者であることを特定します。しかし、彼女が病院に到着した時には、既にサルテはサミュエルによって運び出された後でした。サルテの担当が自身の部署から別の刑事、ヴェルネール（ジェラール・ランヴァン）らに引き継がれたことに強い不満を抱いたファーブルは、上層部の指示に逆らい、単独で捜査を開始します。

妻を救うため病院からサルテを連れ出したサミュエル、そしてサルテ自身、そして彼らを追跡する刑事たち。それぞれの思惑と立場が複雑に絡み合い、物語は息つく暇もないノンストップの展開へと突き進んでいきます。サミュエルは警察からも犯人からも追われる身となり、妻の救出と自身の無実を証明するために奔走する中で、サルテの抱える秘密や事件の真相に深く巻き込まれていくことになります。病院という閉鎖空間から始まった物語は、街全体を舞台にした壮大な追跡劇へと発展し、観客は先の読めないスリルに満ちた展開に引き込まれることでしょう。

キャストとスタッフ

主要キャストは以下の通りです。

サミュエル・ピエレ - ジル・ルルーシュ
ナディア・ピエレ - エレナ・アナヤ
ユーゴ・サルテ - ロシュディ・ゼム
ファーブル - ミレーユ・ペリエ
アナイス・スジーニ - クレール・ペロ
パトリック・ヴェルネール - ジェラール・ランヴァン

スタッフは以下の通りです。

監督: フレッド・カヴァイエ
製作: シリル・コルボー＝ジュスタン、ジャン＝バティスト・デュポン
脚本: フレッド・カヴァイエ、ギョーム・ルマン
音楽: クラウス・バデルト

公開と評価、そしてリメイク

本作はフランスで2010年12月1日に公開され、初登場3位となるなど、本国である程度の成功を収めました。日本では、2011年6月のフランス映画祭で上映された後、同年8月6日から劇場公開され、全国で順次封切られました。アメリカでは『Point Blank』の英語題で公開されています。

本作はその緊迫感あふれる物語と巧みな演出が高く評価され、第7回ジャック・ドレー賞を受賞しました。また、第83回ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞では外国映画トップ5に選出されるなど、国際的な評価も獲得しています。

その完成度の高さから、後にリメイク版も制作されました。2014年には韓国で『ポイントブランク～標的にされた男～』として、そして2019年にはアメリカで同じく『ポイント・ブランク -この愛のために撃て-』として、それぞれ舞台を移し、新たな解釈で映画化されています。

『この愛のために撃て』は、愛する者を守るという普遍的なテーマを軸に、ノンストップのアクションとサスペンスで観る者を引き込む、フレンチスリラーの秀作です。

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