こわれゆく女

『こわれゆく女』

『こわれゆく女』（英: A Woman Under the Influence）は、1974年に公開されたアメリカのドラマ映画で、ジョン・カサヴェテスが監督を務めました。この映画は、心のバランスを崩した妻メイベルと、彼女をサポートする夫ニックとの複雑な関係を描いています。主演のジーナ・ローランズとピーター・フォークの演技は高く評価され、ローランズは第32回ゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞しました。また、1990年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録されています。

ストーリー概要

物語は、土木作業員のニックとその妻メイベルを中心に展開されます。メイベルは情緒が不安定で神経症的な症状を抱え、子どもたちを預けて夫婦の時間を楽しむ予定の夜、ニックが仕事で帰れず、孤独感から酒場で他の男性と過ごすことになります。この出来事が彼女にさらなる不安をもたらし、翌日にはニックが職場の同僚を連れて帰宅したときに不穏な雰囲気が生じます。

メイベルの過剰な行動が周囲の親たちに引かれる原因となり、結果的に医師の介入が求められます。彼女の純粋なホスピタリティの思いとは裏腹に、他人の前での行動が常に異常視され、夫のニックは彼女を抑えつけようと苦悩します。しかし、メイベルが入院している間、ニックは父親としての役割を強く認識させられ、子どもたちを遊びに連れ出しますが、その行動が逆に子どもたちの不安を増幅させることになります。

家族の絆

半年後、メイベルが退院した際、家族は彼女を温かく迎え入れます。しかし、メイベルは周囲の期待に応えようとして自己を抑えた態度を取り、それがニックの苛立ちを引き起こします。「自分らしく振る舞え」との彼の声に彼女は追い込まれ、突如として踊り出す事態に。ただ、その姿に子どもたちは心を痛め、「ママが心配」と言って寄り添います。

物語の核心は、障害を抱えたメイベルとそれを理解しようとするニックとの間の固い愛の絆です。どのような試練があっても共に過ごす決意が、彼らの愛をより深いものにする様子が描かれています。最後には、お互いに穏やかな笑顔を見せながら、日常に戻る二人の姿が印象的に映し出されます。

キャスト陣

• - ニック・ロンゲッティ: ピーター・フォーク - 工事作業員。
• - メイベル・ロンゲッティ: ジーナ・ローランズ - ニックの妻。
• - ジョージ・モーテンセン: フレッド・ドレイパー - メイベルの父。
• - マーサ・モーテンセン: レディ・ローランズ - メイベルの母。
• - マーガレット・ロンゲッティ: キャサリン・カサヴェテス - ニックの母。
• - 子どもたち: ニックとメイベルの息子、娘たち。

この作品は、カサヴェテスの独自の視点とキャラクターの深掘りによって、家庭内での人間関係の複雑さと愛情の力強さを描き出しています。目を背けがちなテーマながらも、心を打つ名作といえるでしょう。

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