こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち

こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち

『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』は、著者渡辺一史によるノンフィクション書籍です。この作品は、全身の筋力が徐々に衰えていく進行性筋ジストロフィーという難病と闘う鹿野靖明と、その生活を支えるボランティアたちとの心温まる交流を描いています。鹿野は1959年に生まれ、2002年に亡くなるまで札幌市に住んでいました。

本書では、鹿野が自立した生活を選び、それを支えるボランティアたちとの関係が深められていく様子が綴られています。鹿野はひとりでは体を動かすことができず、人工呼吸器を使用し、24時間体制で痰の吸引が必要です。しかし、彼はそれでも自らの意思を持ち、自由な生活を求めました。彼の選択には多くの困難が伴いましたが、ボランティアたちとの出会いによって支えられる様子がリアルに描かれています。

本書のタイトルは、ある夜中に鹿野が「バナナが食べたい」と突然言い出したエピソードに由来します。この発言に対するボランティアのひとりの驚きが、タイトルに込められています。このエピソードは、鹿野の自由な発想を象徴するものであり、障害を持つ人とその介助者との関係構築の本質を問う重要な要素ともなっています。

この作品は、ただ鹿野の生活や病気の話をするだけでなく、障害者が自立した生活を送ることができる社会とはどうあるべきか、そしてそのためにはボランティアとの良好なコミュニケーションが不可欠であることを提示しています。すべての人が対等に助け合う社会の実現を目指す姿勢が明確に表現されています。

本書は第35回大宅壮一ノンフィクション賞及び第25回講談社ノンフィクション賞を受賞しており、その評価は高いです。著者の切り口は、多くの読者にとって新しい視点を提供し、障害者の生活や、支援者との関係についての理解を深める助けとなるでしょう。

また、2018年にはこのノンフィクションを basis とした映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』も公開され、主演には大泉洋が登場しました。この映画は札幌フィルムコミッションの支援を受け、原作の感動を忠実に映像化することに成功しています。公開初週に映画ランキングで7位に入り、次の週には4位にランクアップするなど、観客の心をつかみました。

『こんな夜更けにバナナかよ』は、単なる障害の物語ではなく、人と人とのつながり、ボランティアの重要性、そして自立した生活の尊さを教えてくれる貴重な作品です。読者は鹿野の生き様に多くの示唆を感じることができ、彼の言葉や行動から深遠なメッセージを受け取ることができるでしょう。

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