さしこのくせに〜この番組はAKBとは全く関係ありません〜

『さしこのくせに〜この番組はAKBとは全く関係ありません〜』：指原莉乃の成長と視聴者参加型番組の光と影

2011年、TBS系列で放送されたバラエティ番組『さしこのくせに〜この番組はAKBとは全く関係ありません〜』は、当時AKB48に所属していた指原莉乃を主役とした異色の番組でした。番組タイトルとは裏腹に、AKB48関連の企画も多く取り入れられ、指原莉乃の育成という側面と、アイドル業界の複雑な側面を同時に映し出していました。

番組の基本フォーマットは、「さしこ育成バラエティ」というコンセプトのもと、司会を務めた土田晃之の指導の下、様々なチャレンジに挑む指原莉乃の姿を追いかけるものでした。ジャージ姿がトレードマークとなり、そのチャレンジの成果は「さしこ審議委員会」によって評価され、評価が低ければ番組打ち切りという、緊張感あふれる展開が視聴者の注目を集めました。

番組の大きな特徴の一つとして、視聴者参加型の企画が挙げられます。公式携帯サイトを通じて、視聴者が番組の行方や指原莉乃のチャレンジ内容に投票できるシステムが導入されていました。しかし、このシステムは月額課金制であり、1票につき50円という有料課金が批判の的となりました。特に第5回放送では、「番組存続希望」への投票が課せられ、目標票数に達しなければ番組打ち切りという厳しい状況が提示されました。この事態は、番組スポンサーであるサイバード社の直接関与によって実現したもので、放送直後には目標を達成したものの、「ファンを利用した金集めではないか」という強い批判が視聴者から巻き起こり、放送倫理・番組向上機構でも取り上げられる事態に発展しました。サイバード社は賛否両論あることを認め、秋元康氏からも厳しく叱責されたという事実が報じられました。

番組内での指原莉乃の振る舞いも、話題を呼びました。多くのチャレンジでは「よく頑張った」と評価されていましたが、第12回放送の「銀だこアルバイト」では、指原莉乃の態度や常識の欠如を指摘する苦情が殺到。これを受けて、第17回放送では「指原社会勉強企画・マナー教室初体験」が放送されるなど、番組は指原莉乃自身の成長という側面も強く打ち出していました。築地銀だこの当時の指導者は、最終企画の「さしこ裁判」で証言台に立ち、「あの放送以来、アルバイトに舐められるようになった」と、番組の影響の大きさを語っています。

番組スタッフは、ナレーターに山田真一氏、構成に武田郁之輔氏、八代丈寛氏、福田晶平氏など、バラエティ番組で実績のある面々が名を連ねていました。また、AKB48およびNot yetの楽曲が番組内で使用され、番組全体の雰囲気作りに貢献していました。

『さしこのくせに〜この番組はAKBとは全く関係ありません〜』は、単なるバラエティ番組にとどまらず、視聴者参加型番組の課題や、若手アイドルの成長過程、そしてエンターテインメントビジネスの複雑さを浮き彫りにした、多角的な視点を持つ番組でした。指原莉乃のその後の人気の隆盛を考えると、この番組が彼女の人生に与えた影響は計り知れません。また、この番組は、視聴者参加型番組における倫理的な問題提起を行い、今後の番組制作に影響を与えたという意味でも重要な作品と言えるでしょう。番組で垣間見えた指原莉乃の素直さと努力は、多くの視聴者の共感を呼び、彼女を「国民的アイドル」へと押し上げる第一歩となったと言えるのではないでしょうか。

2014年には、指原莉乃と土田晃之が出演する恋愛バラエティ番組『恋愛総選挙』がフジテレビ系列で放送開始されました。これは、この番組で培われた二人が持つ独特の空気感や、番組で築き上げられた関係性が、新たな番組制作へと繋がった好例と言えるかもしれません。

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