さよなら にっぽん

アルバム『さよなら にっぽん』の紹介

『さよなら にっぽん』は、1995年10月25日にリリースされたシンガーソングライターさだまさしの21枚目のオリジナルアルバムです。このアルバムに収録されている楽曲は、太平洋戦争の終戦から50年を迎えるという特別な年に、戦争や平和に関する思いを表現しています。特に、この年には長崎市に平和を祈念するミュージアムを設立する「ナガサキピーススフィア貝の火運動」が始まるなど、社会的な意味を持つ年でもありました。

収録曲について

1. さよなら にっぽん

この曲は、フランスでの水爆実験や地下鉄サリン事件、阪神淡路大震災という1995年の出来事に焦点を当て、日本の現状に対する深い憂いを歌った楽曲です。タイトルは、さだまさしが愛してやまない日本の文化や美が失われていくことへの危惧を示しています。また、この曲はシングル「名刺」（カップリング曲）としてもリリースされています。

2. 名刺

サラリーマンの苦悩をコミカルに描いたこの作品は、聴く人に笑いと共感をもたらします。曲の最後にはクリスマスソングの要素も取り入れられており、聴く人にホッとする気持ちを伝えます。

3. ステラ,僕までの地図

この曲では、女性ステラに対する未練を抱える男性の心理が描写されています。彼女を思い出として「地図」にするという独特の視点から、穏やかな感情が伝わってきます。曲の解説では、さだが過去の楽曲「セロ弾きのゴーシュ」との共通点を触れています。

4. 烈

宮尾登美子の映画『藏』の主題歌であるこの曲は、主役の名前からタイトルが取られています。元々はシングルとしてリリースされており、アルバムでも重要な位置を占めています。

5. 地平線

「烈」のカップリングとしてのこの曲は、制作中にふと生まれたというエピソードを持っており、時期に応じた自然な流れを感じさせます。

6. 六日のあやめ

歌詞内で登場する「六日のあやめ」や「十日の菊」は、それぞれ日本の伝統行事に関連しており、すでに遅れた女性の状態を象徴しています。さだはこのテーマの下で、女性の魅力をシンプルに表現しています。

7. 鳥辺山心中

伝説や文学からインスパイアを受けたこの曲は、心中する女性の心の葛藤を歌ったものです。『曽根崎心中』の序文を引用し、日本の古きよき物語との繋がりを感じさせます。

8. 銀杏散りやまず

同名の小説に由来したこの曲は、さだの伯父への鎮魂の意を込めた作品で、父の帰国にまつわる思い出と戦争の悲痛さを歌っています。

9. 兵士の手紙ときよしこの夜

この曲は、旧陸軍特攻隊の兵士による家族への遺書を背景に、「きよしこの夜」の旋律に合わせて伝えられています。戦争の悲しみや家族への愛を後世に伝えるために作られたわけであり、特に心に響きます。

10. 青の季節

スイスの聖堂に施されたシャガールのステンドグラスにインスパイアを受けたこの曲は、「青」をテーマに水の象徴として生生流転の様子を描いています。1997年には他のアーティストによってカバーされています。

音楽制作に関して

このアルバムの全曲はさだまさしが作詞・作曲を手掛けており、一部の曲では他の作曲家の作品を引用しています。特に「兵士の手紙ときよしこの夜」では、著名なクリスマスキャロルの要素を取り入れるなど、多様な音楽的影響が見られます。

また、多くの才能あるミュージシャンが参加しており、ギターの石川鷹彦をはじめ、各楽器のプロフェッショナルが協力し、豊かな音楽体験を提供しています。アルバムを通じて、さだまさしの深い思いと平和への願いが優しく響いています。

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