さよならの微笑

さよならの微笑

『さよならの微笑』は、1975年に公開されたフランスの恋愛映画です。原題は『Cousin cousine』。監督はジャン＝シャルル・タケラが務め、主演はマリー＝クリスティーヌ・バローとヴィクトル・ラヌーが務めています。この作品は、不実な配偶者を持つ男女が、互いの境遇を通して心を通わせていく様を、時にユーモラスに、時に切なく描き出した物語です。

あらすじ

物語は、主人公の一人であるマルトが、夫パスカルと共に母親ビジュの結婚式に出席する場面から始まります。そこで彼女は、母親の再婚相手の甥にあたるルドヴィクと巡り会います。パスカルは浮気癖のある男で、やがてマルトは、夫がルドヴィクの妻カリーヌとも関係を持っていた事実を知ることになります。この共通の痛みを契機に、マルトとルドヴィクは互いに接近していきます。彼らは、それぞれの不貞な配偶者を意識するかのように、あるいは慰め合うかのように、頻繁に会うようになり、時間を共にするうちに自然と惹かれ合っていきます。しかし、彼らは配偶者に対して後ろめたさを感じたくないという思いからか、あるいは奇妙な矜持からか、肉体的な関係にはすぐには踏み込みませんでした。

二人の親密な関係は、やがて家族や親戚の間で公然の秘密として噂され始めます。周囲の好奇の目や憶測が飛び交う中、二人の関係はかえって後押しされる形となり、ついに彼らは結ばれます。肉体的な関係を持ったことで、二人の絆はさらに深まり、その後は互いを頻繁に求め合うようになります。

クリスマスイブの夜、親戚一同が集まる賑やかなパーティーの最中、マルトとルドヴィクはもはや周囲の目を気にすることなく、公然と親密な態度を示します。彼らの関係は隠しようもなく、家族や親戚たちはその光景を目撃することになります。そして、集まった家族や親戚、そして子供たちに別れを告げたマルトとルドヴィクは、古いしがらみを断ち切り、二人で新たな人生の旅へと歩み出すのだったのです。

キャスト

物語を彩る主要キャストは以下の通りです。

マルト: マリー＝クリスティーヌ・バロー
物語の主人公の一人。不実な夫を持つ女性。
ルドヴィク: ヴィクトル・ラヌー
マルトの母親の再婚相手の甥。ダンス教師で、マルトと同じく配偶者に裏切られる。
パスカル: ギイ・マルシャン
マルトの夫。浮気癖があり、ルドヴィクの妻カリーヌとも関係を持つ。
カリーヌ: マリー＝フランス・ピジェ
ルドヴィクの妻。パスカルと不倫関係にある。
ビジュ: ジネット・ガルサン
マルトの母親。物語の始まりとなる結婚式の主役の一人。

評価と影響

本作は、公開後、批評家からも高く評価されました。特に、第49回アカデミー賞では、主演を務めたマリー＝クリスティーヌ・バローが主演女優賞にノミネートされたほか、脚本賞、そして外国語映画賞の合計3部門でノミネートされました。残念ながら受賞は逃しましたが、これは当時のフランス映画としては異例の評価であり、作品の質の高さを証明しています。

その後の影響としては、1989年にアメリカ合衆国で『今ひとたび』（原題：Cousins*）としてリメイクされています。監督はジョエル・シュマッカーが務めました。

『さよならの微笑』は、一見複雑な関係を描きながらも、人間の普遍的な感情や、因習にとらわれない自由な生き方を求める姿を温かく描き出した作品として、今日でも多くの映画ファンに愛されています。

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