さらば愛しきルパンよ

『さらば愛しきルパンよ』は、1977年から1980年にかけて放送された『ルパン三世 (TV第2シリーズ)』の最終回を飾る、第155話です。宮崎駿監督が「照樹務」名義で脚本と演出を担当したことで知られています。

このエピソードは、TV第2シリーズへの宮崎監督自身の不満から生まれた作品です。当初のタイトルは「ドロボウは平和を愛す」で、ロボット兵が登場するなど、後の代表作である『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』に通じる要素が数多く見られます。特にヒロインの声優に島本須美を起用している点も注目に値します。

ストーリーは、謎のロボット兵による宝石店襲撃から始まります。ロボット兵は、国防軍の依頼で開発された装甲ロボット兵「ラムダ」で、何者かによって強奪されたものです。ルパンの犯行声明が発見されたことで、政府は非常事態宣言を発令。警部である銭形は、犯行声明の信憑性に疑問を抱き、偽者ルパンの仕業だと主張しますが、警視総監は聞き入れず、街は戦車部隊によって戒厳状態となります。

銭形は、追跡の過程でラムダが市民をかばう場面を目撃します。ルパンのアジトを突き止め潜入した銭形は、ラムダを操縦する少女、小山田真希と出会います。真希の父である小山田博士は、ラムダの危険性を感じ開発中止を訴えましたが、永田重工に研究データを持ち去られ、絶望のうちに亡くなっていました。真希は父の遺志を継ぎ、ラムダを使ってロボット兵の危険性を世に知らしめようと、偽者ルパン一味に利用されたのです。

しかし、真希を利用したルパン一味は偽者で、ロボット兵を量産して利益を得ようとする永田重工の手先でした。一連の騒動でロボット兵の有効性を証明した偽者ルパン一味は、真希を始末しようとしたところを、本物のルパンに阻止されます。ルパンは、偽者ルパン一味と永田重工社長を相手に、真希と共に工場へと向かいます。

激しい戦闘の末、永田重工の野望は打ち砕かれます。偽者ルパン一味は捕まり、真希は全てを語り、本物のルパンたちは、いつものように笑顔で去っていくのでした。

このエピソードは、単なるアクションだけでなく、軍事技術の危険性や、人間の業といった深いテーマも織り込まれています。また、ラストシーンでルパンたちが乗る車は、宮崎監督のお気に入りのフィアット500であることなど、細部にも監督のこだわりが見られます。

『さらば愛しきルパンよ』は、ルパン三世シリーズの中でも特に高い人気を誇り、様々なファン投票で常に上位にランクインする名作として知られています。2011年の「ルパン三世アニメ40周年記念 マイ・ベストエピソード投票」ではTV第2シリーズ部門で1位を獲得し、劇場版『ルパン三世 カリオストロの城』とともに二冠を達成しました。さらに2017年の「ルパン三世ベストセレクション」や、2021年の「みんなが選んだルパン三世」でも第1位に選ばれています。

作品中には、当時の中野駅や高円寺付近の風景、警視庁本庁舎の建て替え後の姿など、リアルな描写も取り入れられています。一方で、地下鉄南北線や、ラムダが飛び回る様子など、現実離れした描写とのバランスが独特の雰囲気を作り出しています。

宮崎駿監督自身も、後年、ニセ・ルパンの導入について「ああいう馬鹿な事やってしまったんです。よくなかったと思ってる」と述べているように、いくつかの反省点も残されていますが、それでもなお、このエピソードはルパン三世シリーズの中でも最も記憶に残る、そして愛される一編として、多くのファンから支持され続けています。その人気の高さは、様々な企画における高い投票率からも明らかです。様々な要素が複雑に絡み合い、観る者の心を掴んで離さない、まさに『さらば愛しきルパンよ』の名にふさわしい作品と言えるでしょう。

もう一度検索