さらば愛しのやくざ

『さらば愛しのやくざ』は、1988年に発表された安楽隆雄の小説を原作とし、1990年に公開された東映製作のヤクザ映画です。陣内孝則と柳葉敏郎が主演を務め、ニューウェーブヤクザ映画というジャンルが隆盛を極めた時代に、その流れを汲む作品として注目を集めました。

あらすじ

物語は、ジョン・レノンが凶弾に倒れた1980年から始まります。陣内孝則演じるヤクザの藤島悟郎が経営するバー「MOBY-DICK」に、柳葉敏郎演じる早稲田大学のエリート学生、中馬達也が客として訪れます。相楽晴子演じる悟郎の異母妹、高梨季美子は店でホステスとして働いていました。季美子は過去に悟郎と対立するヤクザ、工藤によって暴行を受け、隆という子供を産んでおり、悟郎にとっては仇敵でした。

ある日、店に現れた工藤に対し、悟郎は達也に暴行を加えて追い払います。しかし、この出会いをきっかけに悟郎と達也の間には友情が芽生え、達也は季美子に恋心を抱くようになります。

その後、組の抗争に巻き込まれた悟郎は、組を救うために工藤を殺害し、刑務所に服役することになります。10年の刑期を終え出所した悟郎を出迎えたのは、海外で過ごし帰国した達也でした。しかし、悟郎の兄貴分である坂田は、組長が悟郎に跡目を継がせるつもりであることを知り、焦りから悟郎の甥である隆を唆し、悟郎の命を狙わせます。

キャスト

藤島悟郎：陣内孝則
中馬達也：柳葉敏郎
高梨季美子：相楽晴子
坂田明二：大竹まこと
高梨隆：稲垣吾郎
工藤剛三：内藤剛志
田所真佐男：豊原功輔
唐沢忠志：田中邦衛（特別出演）

スタッフ

監督：和泉聖治
原作：安楽隆雄
脚本：野沢尚
音楽：大谷幸

作品の評価

脚本を担当した野沢尚は、本作の脚本執筆にあたり、過去のヤクザ映画から多くの要素を参考にしたと語っています。また、脚本完成後には本物のヤクザにチェックを依頼し、言葉遣いなどを修正したというエピソードも残っています。

公開当時、あるスポーツ紙は本作を「古めかしい」と評しましたが、野沢自身は映画の出来に自信を持っていたようです。しかし、劇場で観客の反応を観察した際、純粋なヤクザ映画を期待していた観客から不満の声が上がったことも明かしています。

受賞

* 柳葉敏郎：ブルーリボン賞助演男優賞

『さらば愛しのやくざ』は、ヤクザの世界を舞台に、友情、愛情、裏切りが複雑に絡み合う人間ドラマを描いた作品です。ニューウェーブヤクザ映画というジャンルが隆盛を極めた時代を象徴する作品として、現在でも多くのファンに支持されています。

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