ざしき童子のはなし

ざしき童子のはなし

「ざしき童子のはなし」は宮沢賢治が手掛けた童話で、1926年2月に発表されました。この物語は尾形亀之助が主催した雑誌『月曜』に掲載され、賢治が生前に発表した数少ない童話の一つとして知られています。この作品では、座敷童子と呼ばれる不思議な存在にまつわる4つのエピソードがオムニバス形式で展開されます。

物語の流れ

物語は2人の子供が庭で遊んでいる場面から始まります。彼らは家の中から聞こえる掃除の音に気付き、気になったため家の中に入ります。しかし、そこには誰もいないのです。この不可解な現象は、物語全体のテーマである座敷童子の不思議さを象徴しています。また、別のエピソードでは、10人の子供が遊びの最中に、いつの間にか11人に増えているという奇妙な出来事が起こります。子供たちは誰も自分が座敷童子であるとは知らず、繰り返し数えても必ず11人が存在します。この謎が大人たちによって「一人が座敷童子だ」と指摘されても、子供たちは異口同音にそれを否定します。

次に、旧暦の8月に行われる如来様の祭りに招かれる子供たちのエピソードがあります。本来であれば盛大に開催されるはずの祭りが、うちの一人がはしかにかかっているため延期されてしまいます。しかし祭りが行われることになったとき、他の子供たちは仕返しを試みます。その結果、彼の不思議な様子を通じて、座敷童子にまつわる物語が織り込まれていきます。

さらに北上川の渡し船の船頭が語るエピソードも登場します。彼は月の明かりの下、美しい服装をした男の子を船に乗せ、その子が長い間住んでいた家を離れ、別の家に向かう事を伝えます。その後、男の子が去った家は落ちぶれ、彼が新たに行こうとした家には良いことが続くという現象が描かれています。このように、座敷童子は場所の運命にも影響を及ぼす存在として描かれています。

作品の背景と影響

東北地方には古くから座敷童子に関連する伝説や物語が多数存在します。柳田國男の「遠野物語」にもそのテーマが反映されています。賢治は当時発表されていた資料や文献を参照しており、作品冒頭に使われる「ぼくらの方の」という言葉には、この文脈が現れています。さらに、賢治のその他の作品にも座敷童子に関する描写が見受けられます。

佐々木喜善との交流も本作に影響を与えています。彼は賢治に『月曜』を届けるよう依頼し、1928年には賢治の作品を引用して解説をつけ、雑誌に発表しました。この交流がきっかけとなり、賢治と佐々木は晩年まで親しい関係を築きました。

本作はその後も様々なメディアに影響を与えており、特に漫画家の萩尾望都は「10人の子どもがいつの間にか11人になっている」というエピソードから大きなヒントを得て、SF漫画『11人いる!』を創作しました。

まとめ

「ざしき童子のはなし」は日常の中に潜む不思議な存在を描いた魅力的な作品です。それぞれのエピソードが展開する中で、子どもたちのイマジネーションや座敷童子の不思議な影響を経験しながら、読者は子どもの頃の純粋さや冒険心を再認識させられることでしょう。

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