しあわせ未満

しあわせ未満

概要

「しあわせ未満」は、シンガーソングライターである太田裕美が1977年の1月にリリースした通算8枚目のシングル盤です。この楽曲は、発売された1977年の日本の音楽シーンにおいて大きな注目を集め、その年の年間シングル売上ランキングで第37位にランクインするという商業的な成功を収めました。当時のアイドル歌謡やニューミュージックが混在する中で、独自の存在感を放った一曲と言えます。

楽曲解説

本作「しあわせ未満」の特筆すべき点として、歌詞の表現方法が挙げられます。太田裕美のこれまでのシングル楽曲は、主に女性の視点や心情を描いたものが中心でしたが、この「しあわせ未満」では、歌詞の語り手が全て男性語で貫かれています。これは、太田裕美のシングルとしては初めての試みであり、アーティストとしての表現の幅を広げる重要な一歩となりました。この成功を受け、その後も太田裕美は「南風 - SOUTH WIND -」、「振り向けばイエスタディ」、「君と歩いた青春」といった楽曲で男性語の詞を取り入れ、多様な世界観を表現しています。「しあわせ未満」における男性語の詞は、当時のリスナーにとっても新鮮な驚きをもって受け止められ、楽曲の独自性を際立たせる要素となりました。

収録曲

シングル盤には、A面とB面にそれぞれ以下の楽曲が収録されています。

A面：しあわせ未満 (演奏時間：3分48秒)
作詞：松本隆
作曲：筒美京平
編曲：萩田光雄
当時の歌謡界・ポップス界を牽引していた稀代のヒットメーカーである作詞家の松本隆氏と作曲家の筒美京平氏という強力なコンビによって生み出されました。編曲は、多くの名曲を手掛けたアレンジャーの萩田光雄氏が担当しています。このクリエイター陣の組み合わせが、楽曲の完成度と魅力を高めています。

B面：初恋ノスタルジー (演奏時間：3分55秒)
作詞：松本隆
作曲：筒美京平
編曲：萩田光雄
シングルのカップリング曲である「初恋ノスタルジー」も、A面曲と同じく松本隆氏と筒美京平氏の作詞・作曲コンビによる作品であり、編曲も萩田光雄氏が手掛けています。A面曲と同様に、当時の日本の音楽界を代表するクリエイター陣が制作に関わっており、カップリング曲ながらもクオリティの高い楽曲となっています。

両曲ともに、松本隆氏と筒美京平氏のコンビによる哀愁を帯びたメロディーと物語性のある歌詞が見事に融合しており、太田裕美の透明感のある歌声によって表現されています。

関連情報

「しあわせ未満」は、太田裕美の代表曲の一つとして、リリースから長い年月を経た現在でも高く評価されており、彼女の音楽キャリアを網羅した様々なベストアルバムやコンピレーションアルバムに収録されています。例えば、『GOLDEN J-POP/THE BEST 太田裕美』や『GOLDEN☆BEST 太田裕美 コンプリート・シングル・コレクション』といったアルバムでその歌声を再び聴くことができます。

また、この楽曲の作詞を手掛けた松本隆氏の作詞家活動30周年を記念して制作されたCD-BOX『風街図鑑〜松本隆 作詞活動30周年記念』にも「しあわせ未満」は収録されており、作詞家である松本隆氏のキャリアにおける重要な作品としても位置づけられています。

本作が発表された1977年は、日本の音楽シーンがアイドル歌謡からニューミュージックへと変化しつつある過渡期であり、「しあわせ未満」のような質の高いポップスは、その時代の音楽的多様性を象徴する楽曲の一つと言えます。この楽曲は、単なるヒット曲としてだけでなく、太田裕美というアーティストの表現の多様性、そして当時の日本の音楽制作における質の高さを物語る作品として、今なお多くのファンに愛されています。

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