そして、ユリコは一人になった

『そして、ユリコは一人になった』は、貴戸湊太によるミステリー小説で、学園を舞台にした物語が展開されます。この作品は、第18回『このミステリーがすごい!』大賞にて、貴志祐方名義で「ユリコは一人だけになった」として応募され、U-NEXT・カンテレ賞を受賞しました。その後、改題・加筆修正を経て、2020年に宝島社文庫から刊行されました。また、同年にはテレビドラマ化もされ、注目を集めました。

物語の舞台となるのは、神戸市灘区にある進学校、百合ヶ原高校です。この学校には、女子校時代の名残で女子生徒が強いという独特の風潮があり、「ユリコ様伝説」という奇妙な言い伝えが存在します。この伝説によれば、「ユリコ様」とは特別な地位を持つ生徒であり、彼女に逆らう者は不幸に見舞われるとされています。この「ユリコ様」になれるのは、学校に在籍する「ユリコ」という名前の女子生徒ただ一人です。もし複数「ユリコ」が存在する場合、最終的に一人になるまで転校や退学が起こるとされています。

物語は、新入生の矢坂百合子が入学するところから始まります。彼女が入学するまで、百合ヶ原高校には筒見友里子という「ユリコ」が一人だけでしたが、新入生には百合子を含め4人の「ユリコ」がいました。百合子は、部活の先輩からこの伝説を聞き、親友の嶋倉美月に相談しますが、美月は伝説を「ただのオカルト」として一蹴します。しかし、3年生の浅香樹里が学校の屋上から飛び降りたことをきっかけに、不幸な出来事が次々と起こり始めます。

物語には、様々な登場人物が登場します。主人公の矢坂百合子は、親友の美月と離れたくない一心で、美月が志望していた百合ヶ原高校を受験し入学します。しかし、高校では美月とクラスが分かれ、クラスメイトからいじめを受けるようになります。彼女の名前が「ユリコ」であったことが、ユリコ様候補となるきっかけとなります。嶋倉美月は、百合子の親友で、演劇部で脚本を担当しています。美貌を持ち、ユリコ様伝説の謎を論理的に推理し、怯える百合子を元気づけます。筒見友里子は、百合子が入学するまで「ユリコ様」だった三年生で、他のユリコ様候補を敵視しています。

この物語には、「白百合の会」というユリコ様伝説を崇拝する非公認サークルも登場します。由利小太郎は、「白百合の会」のメンバーで、小柄でにきびのある2年生です。かつて自身がいじめられていた際に、いじめていた相手が怪我をしたことからユリコ様伝説を信じるようになりました。岼子美咲も「白百合の会」のメンバーで、3年生です。彼女もまた、嫌いな同級生が大怪我したことをユリコ様の天罰だと信じ、伝説に傾倒しています。高見沢友利夫は、化学教師でありながら「白百合の会」の顧問を務めており、ユリコ様の存在を肯定的に捉えています。

2020年には、関西テレビの「カンテレドラマらぼ」枠でテレビドラマ化されました。ドラマ版では、主人公が嶋倉美月に変更されており、原作とは大きく異なる展開が描かれています。また、ドラマオリジナルのキャラクターとして神崎真歩、木下壮太、進藤あきらなどが登場し、物語の結末も原作とは異なっています。キャストには、玉城ティナが嶋倉美月役、岡[[本夏美]]が矢坂百合子役、天野はなが筒見友里子役を演じています。

この作品は、学園ミステリーとしての面白さはもちろん、登場人物たちの複雑な心情や、伝説の背後に隠された真実を追求する過程が魅力です。小説とドラマ、それぞれ異なる視点から物語を楽しめる作品となっています。

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