そして友よ、静かに死ね

『そして友よ、静かに死ね』（Les Lyonnais）

2011年にフランスで公開された本作は、実在の犯罪組織「リヨンの男たち」の一員であったエドモン・ヴィダルの壮絶な人生を基にしたクライムドラマです。監督はオリヴィエ・マルシャルが務め、往年の名優ジェラール・ランヴァンとチェッキー・カリョがW主演を務めています。ヴィダル自身の自伝『さくらんぼ、ひとつかみで』から着想を得て、史実とフィクションが巧みに織り交ぜられ、過去の栄光と現在の苦悩、そして引き裂かれる友情が描かれます。

過去と現在の交錯

物語の主人公エドモン・ヴィダル、通称モモン（ジェラール・ランヴァン）は、かつて名を馳せた「リヨンの男たち」の一員でしたが、今は裏社会から完全に足を洗い、愛する妻や家族とともに静かで平穏な日々を送っています。しかし、彼の過去は完全に消え去ったわけではありません。ある日、モモンにとって兄弟同然の存在であり、共に犯罪に手を染めた旧友セルジュ（チェッキー・カリョ）が、13年に及ぶ逃亡生活の末に逮捕されたという報せが入ります。

家族の安全を最優先に考えるモモンは、旧友を助けることに躊躇いを覚えます。しかし、長年の友情に突き動かされ、結局セルジュを警察から奪還する計画への協力を決意します。モモンたちが陽動を引きつける間に、別の仲間たちが大胆な手口でセルジュを連れ出し、隠れ家へと匿います。

迫りくる危険と復讐

束の間の安息もつかの間、セルジュはスペインの麻薬組織を裏切った過去があり、その命を狙われていることが明らかになります。セルジュを匿ったことで、モモンとその家族の平穏な生活にも危険の影が忍び寄ります。そして、最悪の事態が起こります。セルジュの娘であり、モモンが実の娘のように可愛がっていたリルが、幼い息子ルカの眼前で非情にも射殺されてしまうのです。

愛する者を奪われた怒りと悲しみから、モモンとセルジュは共に実行犯である麻薬組織のボス、ゼルビブへの復讐を遂げます。しかし、ゼルビブがリル殺害後、かつての仲間ニックに電話していたことを知ったモモンは、新たな疑念を抱きます。かつてモモンたちが逮捕された際、ニックだけがその場を離れて逮捕を免れていたことから、彼が裏切り者ではないかと睨んだのです。

真実の重みと最後の選択

麻薬取引のためスペインに滞在しているニックに会いに行ったモモンは、彼が裏切りを否定しつつも、幾度となく自分を裏切ったセルジュを罵倒し、「いい加減に目を覚ませ」とセルジュの居場所を教えろと迫る姿を目にします。友情を何よりも重んじるモモンはこれを聞き入れず、さらに自身の家族にも危害を加えようとするニックを殺害します。

しかし、事態は思わぬ方向へ進みます。セルジュの事件を担当する刑事ブロナーから、かつてモモンたちが逮捕されたのはセルジュの密告によるものであったことを示す供述書を見せられ、さらに当時の警察とセルジュとの間で交わされた「協定」の詳細を聞かされたモモンは、激しい衝撃と動揺に見舞われます。ブロナーは、ニック殺害を見逃す代わりにセルジュの居場所を明かすよう迫ります。

走馬灯のように駆け巡るセルジュとの思い出と、突きつけられた裏切りの可能性。当時の判決でセルジュだけが量刑が軽かったことを思い出したモモンは、遂に親友の裏切りを確信するのです。

友情の終焉、静かなる決別

逃走用のパスポートを持ってセルジュの隠れ家を訪れたモモンは、一丁の拳銃をセルジュに手渡します。その中には、弾丸がたった一つだけ込められていました。モモンは、35年間の裏切りについて「仲間に恥じない落とし前を付けろ」とだけ告げ、その場を立ち去ります。

隠れ家を出たモモンの前には、警察が待ち構えていました。モモンをやり過ごし、セルジュ逮捕のために踏み込もうとしたその時、部屋の中から一発の銃声が響き渡ります。モモンは、その音を背中で静かに受け止めるのでした。

キャスト

本作には、現在のモモンをジェラール・ランヴァン、若年期をディミトリ・ストロージュが演じるほか、セルジュをチェッキー・カリョが演じています。また、「リヨンの男たち」のメンバーを演じる俳優たち、モモンの妻役、担当刑事など、多くの個性的なキャストが登場します。特筆すべきは、ダニー役のリオネル・アスティエと若年期ダニー役のシモン・アスティエが実の親子であることです。

評価と受賞

批評家からの評価は賛否が分かれており、フランス国内のアロシネでは平均2.8/5点、Rotten Tomatoesでは平均5.00/10点となっています。しかし、若年期のモモンを演じたディミトリ・ストロージュは、第37回セザール賞で有望男優賞にノミネートされるなど、演技面での評価も得ています。

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