その街のこども

『その街のこども』は、NHK大阪放送局が制作した阪神・淡路大震災15年特集ドラマとして、2010年1月17日にNHK総合テレビで放送されました。震災から15年が経過した神戸を舞台に、震災を経験した男女が、偶然の出会いをきっかけに過去の記憶を語り合い、心の傷を癒していく物語です。

主演は、神戸市出身で震災当時10歳だった森山未來と、中学1年生の時に神戸市で被災した佐藤江梨子。実年齢に近い役を演じることで、よりリアルな感情表現が追求されました。また、約100名の神戸市民がエキストラとして参加し、中には実際の震災遺族も出演しています。特に、ラストシーンは放送当日の早朝に東遊園地で行われた追悼のつどいを撮影したもので、その臨場感がドラマに深みを与えています。

物語は、震災15年目の朝を迎えるまでの一晩の神戸が舞台です。幼い頃に震災を経験した中田勇治（演：森山未來）は、震災後に家族と上京し、現在は建設会社に勤務しています。彼は、ある理由から15年ぶりに神戸を訪れます。一方、大村美夏（演：佐藤江梨子）もまた、震災後に家族と上京しており、13年ぶりに神戸に戻ってきます。二人は偶然出会い、震災の記憶を語り合う中で、それぞれの過去と向き合っていきます。

ドラマには、勇治の会社の先輩である沢村（演：津田寛治）、美夏の親友の父親であるおっちゃん（演：白木利周）など、個性的なキャラクターが登場します。特に、おっちゃんを演じた白木利周は、自身も震災遺族であり、NPO法人阪神淡路大震災「1・17希望の灯り」の代表を務めています。

放送後、視聴者からの大きな反響を受け、ドラマに新規カットや再編集を加えた『その街のこども 劇場版』が2011年1月15日に公開されました。劇場版では、テレビドラマでは描かれなかったシーンが追加され、物語にさらなる深みを与えています。劇場公開に先駆けて、神戸や大阪の映画館で先行上映が行われ、全国各地で順次公開されました。また、配給収入の一部は日本赤十字社を通じて災害救護活動に寄付されました。

ドラマ版は、第36回放送文化基金賞番組部門テレビドラマ番組本賞を受賞し、脚本賞も受賞しました。劇場版も、第33回ヨコハマ映画祭で脚本賞を受賞するなど、高い評価を得ました。東京03の飯塚悟志が初主演したテレビドラマ「高速を降りたら」で演出を務めた佐藤玲衣は、本作について「私の中のドラマの概念が覆った」と述べています。

関連商品として、ドラマのテーマ曲と挿入曲を収録したサウンドトラックCDや、挿入曲「街の灯」を収録した配信限定シングルが発売されました。また、ドラマの放送にあわせて、神戸の人と防災未来センターで写真パネル展が開催され、劇場公開後には、関係者向けのイベント「その街のこどものつどい」が開催されました。さらに、海外の映画祭でも上映され、国内外で高い評価を受けています。

『その街のこども』は、震災の記憶を風化させず、過去と向き合い、未来へ進むことの大切さを教えてくれる作品です。登場人物たちの心の葛藤や成長を通して、多くの人々に感動と希望を与えました。

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