それでも夜は明ける

『それでも夜は明ける』

『それでも夜は明ける』（原題: 12 Years a Slave）は、2013年に公開されたイギリス・アメリカの歴史ドラマ映画です。本作は、1853年に発表されたソロモン・ノーサップの著書『Twelve Years a Slave』を元にしています。ノーサップは1841年にワシントンD.C.で誘拐され、奴隷として売られる自由黒人のヴァイオリニストです。彼は合計12年間、ルイジアナ州のプランテーションで過酷な生活を送りました。

この作品は、スティーヴ・マックイーンが監督、ジョン・リドリーが脚本を担当し、主役のソロモン・ノーサップをキウェテル・イジョフォーが演じました。映画は2013年8月30日にテルライド映画祭で初公開され、その後アメリカでは2013年10月18日に限定公開、11月1日からは拡大公開されました。日本では2014年3月7日に公開されました。

映画で描かれる物語は、1841年のニューヨーク州サラトガが舞台です。ノーサップは、妻と二人の子どもたちと幸せに暮らしていましたが、ある日、二人組の男に金儲けを持ちかけられ、その場で薬を盛られ、奴隷商人に売られてしまいます。ノーサップは必死に自分が自由人であることを訴えますが、材木商のウィリアム・フォードに買い取られ、奴隷としての生活が始まります。

フォードは信仰深い温和な性格の持ち主で、ノーサップを気にかけるものの、他の農園の監督ジョン・ティビッツとの対立が生まれ、最終的にはノーサップは別の悪名高い支配人エドウィン・エップスに売られてしまいます。エップスは残虐で、ノーサップは苦しい日々に耐えながらも、奴隷制の終焉を望んでいました。

彼はある日、自分と似た境遇の白人奴隷アームスバイに手紙を託すことを試みますが、裏切られてしまいます。しかし、耐え忍ぶ中で出会ったカナダ人の大工サミュエル・バスとの出会いが運命を変え、再び希望の光が差し込みます。バスは奴隷制に反対する良心的な人物であり、ノーサップは彼に素性を明かしながら北部の知己に手紙を送るよう懇願します。

数日後、エップスの農場に保安官が訪れ、ノーサップはついに解放されることになります。彼はサラトガに帰郷し、解放された後に伝記を執筆し、奴隷解放運動に貢献しました。この映画は、アカデミー賞をはじめとする数々の映画賞で高く評価され、特に主演のキウェテル・イジョフォーや、エドウィン・エップスを演じたマイケル・ファスベンダーの演技が称賛されました。

本作の製作には多くの困難が伴い、当初の製作会社は黒人の奴隷を題材にした映画は成功しないと拒否しましたが、結果的には高い評価を受けることとなりました。また、ハンス・ジマーの音楽も映画の重要な要素としてインパクトを持っており、サウンドトラックには多彩なアーティストが参加しています。

最終的に『それでも夜は明ける』は、アメリカの映画界が取り上げることが少ない奴隷制の現実に光を当て、観る者に深い思索を促す作品となりました。それは、過去の歴史に対する評価や、現代における人種差別問題についても考えさせられる重要なメッセージを持っています。

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